ハテラス船長の冒険

ハテラス船長の冒険

『ハテラス船長の冒険』（原題：Les Aventures du capitaine Hatteras）は、1866年にジュール・ヴェルヌによって発表された海洋冒険小説です。この作品は、北極の探検をテーマにしたもので、初めて出版されたのは1864年でしたが、その後多くの版が出され、1866年の版は「驚異の旅」シリーズの一部とされています。

作品の背景

この物語の執筆は1866年であり、当時の北極探検に対する夢と科学的知識が影響を与えています。特に1869年にロバート・ピアリーが北極点に到達するよりも50年以上早く書かれたこの作品には、地理的な詳細と未来の発見を予見する描写が含まれています。ヴェルヌの作品は、科学に基づきながらも壮大な冒険を描き出すことで知られています。この物語もその一環です。

当初、物語は雑誌で発表され、その中で第1部と第2部は「北極のイギリス人たち」と「氷の砂漠」というタイトルでした。しかし、編集者の意向で物語の結末が変更される事態もありました。また、エドガー・アラン・ポーの『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』からの影響もあり、物語の中にはその影響を受けた要素がみられます。

あらすじ

1861年が舞台となるこの物語は、ジョン・ハテラス船長が指揮するイギリスの探検隊が北極点を目指す過程を描いています。ハテラスは北極の海域が凍っていないと固く信じており、どんな困難があってもそこに到達することを目指します。しかし、探検中に隊員たちの反乱が起き、船は破壊されてしまいます。それでも、ハテラスは少数の仲間と共に冒険を続け、「ニューアメリカ」と名付けた島で越冬することになります。

この島でハテラスはアメリカの探検隊の残骸を見つけ、クロボニーという水夫の助けを借りて越冬の準備をします。クロボニーは医師であり、科学的知識を持ったキャラクターとして描かれており、火や氷に関する巧妙な技術を駆使して仲間たちを助けます。そのおかげで探検隊は厳しい冬を乗り越えることができました。

春が訪れ、氷が解けると、探検隊は難破船から新たな船を作り、再び北極点を目指します。彼らは新しい火山島を発見し、それをハテラスの名にちなんで名付けるなど、多くの冒険を重ねていきます。三時間かけて登山を行い、ついに火山の火口に到達した彼らは、そこに北極点が存在すると信じてハテラスは飛び込む決意をします。

結末とキャラクター

初版ではハテラスが噴火口で命を落とす結末が設定されましたが、編集者の提案により、その後ハテラスは生き延びたものの精神的な危機に陥り、イギリスに戻った後は精神病院での生活を余儀なくされるという結末に改変されました。彼は余生を忠犬デュークと共に過ごし、ただ北を目指して歩き続ける姿が描かれています。

登場人物には、リチャード・シャンドンという副船長や、極海の航海に詳しいジョンソン、水夫長のクロボニーなど多くのキャラクターがいます。それぞれが異なる役割を果たし、探検隊のダイナミズムを生んでいます。特にクロボニーは医師としての知識を活かし、仲間たちを助け続けます。

この作品は、北極探検への憧れや人間の不屈の精神を感じさせながら、多くの冒険とドラマを提供してくれるものです。

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