ハパックロイド

ハパックロイド：ドイツを代表する海運会社の歴史と変遷

ハパックロイド（Hapag-Lloyd）は、ドイツのハンブルクに本社を置く、世界有数の海運会社であり、海上コンテナ輸送の分野で重要な役割を担っています。

誕生の背景：二つの名門海運会社の統合

ハパックロイドは、1970年9月1日に、ハンブルク・アメリカ・ライン（Hapag）と北ドイツ・ロイドという二つの名門海運会社の合併によって誕生しました。これらの会社は、いずれも19世紀半ばに設立され、第一次世界大戦前には、豪華客船を運航し、ドイツとアメリカをはじめとする世界各地を結ぶ主要な海運会社でした。しかし、二つの世界大戦で大きな損害を受けました。

ハンブルク・アメリカ・ライン（Hapag）

1847年5月27日にハンブルクの商人たちによって設立されたハンブルク・アメリカ・ラインは、当初、帆船でアメリカへの移民と貨物の輸送を行っていました。その後、蒸気船を導入し、カナダや南米にも航路を拡大しました。1880年代後半には、アルベルト・バリーンが経営を主導し、大型客船の導入や東アジア航路の開設など、積極的な経営戦略を展開しました。

1912年からは、5万総トン級の豪華客船「インペラトール」「ファーターラント」「ビスマルク」を建造しました。しかし、第一次世界大戦で多くの船舶を失い、バリーン自身も戦後に自殺するという悲劇に見舞われました。戦後、政府の支援で船団を再建し、航空会社設立にも関与しましたが、第二次世界大戦で再び大きな損害を受けました。戦後は貨物輸送とクルーズ事業に注力し、北ドイツ・ロイドとの合併へと進みました。

北ドイツ・ロイド

1856年にブレーメンの実業家たちによって設立された北ドイツ・ロイドは、ブレーメンとイギリス間の輸送から事業を開始し、その後、アメリカへの移民輸送にも進出しました。1880年代にはアジア航路も開設し、大西洋航路で他の海運会社と激しい競争を繰り広げました。1913年には24万人の旅客を輸送しましたが、第一次世界大戦で船団と施設を失いました。戦後、業務を再開しましたが、第二次世界大戦で再び大きな打撃を受けました。

戦後は、客船をクルーズに転用し、貨物輸送に注力しました。数々のスピード記録を打ち立て、ブルーリボン賞も獲得しました。その後、ハンブルク・アメリカ・ラインとの合併に至りました。

合併後のハパックロイド

合併後のハパックロイドは、コンテナ輸送事業に力を入れ、1971年には日本郵船、商船三井などとともに、コンソーシアム「トリオグループ」を結成し、アジアとヨーロッパ間のコンテナ船定期運航を開始しました。1981年には、当時世界最大のコンテナ船「Frankfurt Express」を就航させました。

海運アライアンスの再編により、1995年からは「グランド・アライアンス」に参加し、コンテナ船の大型化を推進しました。1997年には、旅行代理店プロイスザーク（現在のTUI AG）に買収され、一時的にTUIグループの一員となりました。2005年には、CPシップスを買収し、世界第5位のコンテナ船会社となりました。

TUIグループからの独立

2008年、TUI AGは、中核事業である旅行業に専念するため、ハパックロイドのコンテナ船部門を切り離すことを決定しました。ハンブルクの金融機関などが中心となるグループが買収しましたが、世界金融危機の影響を受け、TUI AGも一部株式を保有し続けることになりました。2012年にはハンブルク市がハパックロイドの株式を買い増し、筆頭株主となりました。

CSAVとUASCとの合併

2014年にはチリのCSAVのコンテナ事業を吸収し、2017年には中東のUASCと合併しました。これらの合併により、ハパックロイドは世界的な海運会社としての地位をさらに強固なものとしました。現在、ハパックロイドは、世界中に広がるネットワークを通じて、コンテナ輸送サービスを提供しています。

航空部門の展開

ハパックロイドは、1972年にチャーター便専門の航空会社ハパックロイド・フルークを設立し、クルーズ客の輸送を行っていました。その後、定期便にも参入し、ハパックフライに社名を変更しました。2002年には、低価格航空会社ハパックロイド・エクスプレスを設立しましたが、後にTUIグループの他の航空会社と合併し、TUIフライ・ドイッチュラントとなりました。


ハパックロイドは、170年以上の歴史を持つ海運会社です。その歴史は、ドイツの海運史だけでなく、世界的な貿易の発展とも深く結びついています。合併や買収を繰り返しながら、世界的な海運会社として成長を続けています。

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