ハマースミス宮殿の白人

「ハマースミス宮殿の白人」（(White Man) in Hammersmith Palais）は、ザ・クラッシュが1978年に発表した楽曲です。バンド自身がプロデュースを手掛けた初の7インチシングルで、B面には「プリズナー」が収録されています。後にアメリカ盤アルバム『白い暴動』に収録されました。

この曲は、従来のクラッシュのイメージを覆す、音楽的・歌詞的な成熟を見せた作品として知られています。イントロは、パワフルなギターサウンドから一転、ゆったりとしたスカ・ビートへと展開し、初期のファンを驚かせました。作者であるジョー・ストラマーは、「俺たちは図太いリフのグループだった。こんなことをやるなんて誰も思っていなかっただろ」と語っています。

歌詞は、ロンドンのライブハウス「ハマースミスパレス」で行われたオールナイトレゲエショーケースの様子から始まります。デリンジャー、リロイ・スマート、デルロイ・ウィルソンといったアーティストが出演する豪華なイベントでしたが、そこで繰り広げられていたのは、ストラマーが期待していたルーツ・ロック・レゲエの反逆精神とはかけ離れた、ポップでライトなレゲエの「パフォーマンス」でした。彼はその期待外れな状況に失望し、幻滅を覚えます。

このコンサートでの失望をきっかけに、歌詞は当時のイギリス社会における様々なテーマへと展開していきます。反暴力のメッセージ、イギリスにおける富の偏在、1978年のパンク・ロックシーンにおける黒人と白人の協調の動きなどが盛り込まれています。また、バートンのスーツを着るような無名のグループ、特にザ・ジャムのようなバンド（ストラマーは、パンクの次のパワー・ポップムーブメントはジャーナリストによって作り上げられたものだと主張していました）に対する嘲りも込められています。そして、新しいバンドが知名度や金のためだけに音楽をやっているのではないか、という疑念が示されます（ただし、クラッシュ自身も、クラスのような他のパンクバンドから同様の批判を受けていました）。

曲の最後は、イギリスの社会的な衰退に対する冷笑的な視点で締めくくられます。例えば、もしヒトラーがイギリスを訪問すれば、リムジンで迎えられてしまうような状況を暗示しています。

「ハマースミス宮殿の白人」は、クラッシュが他のバンドよりも音楽的、政治的に幅広い視野を持っていることを示すとともに、セックス・ピストルズが確立した「エキサイティングだけど型にはまったパンク・ロック」の枠を打ち破る作品となりました。

この曲は1978年に異なるジャケットデザインで再発売されています。311 (バンド)は、この曲をカヴァーし、アルバム『トランジスター』（1997年）に収録する予定でしたが、急遽取りやめ、後にクラッシュのトリビュート・アルバム『バーニング・ロンドン』（1999年）に収録されました。

ジョー・ストラマーはこの曲を非常に気に入り、後のバンド、ザ・メスカレロスでも亡くなるまで演奏し続けました。彼の葬儀においても、この曲が流されたそうです。

ローリング・ストーン誌の「最も偉大な500曲」（2021年版）では340位に選ばれています。

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