ハム (チンパンジー)

ハム：宇宙に飛び出したチンパンジー

ハム（Ham）は、1956年7月にカメルーンで生まれ、1961年に人類に先駆けて宇宙飛行を成し遂げたオスのチンパンジーです。彼の正式な名前は、訓練が行われたホロマン宇宙医療センターの略称であるHAMに由来します。

生い立ちと訓練

捕獲後、アメリカ空軍に購入されたハムは、1959年にホロマン空軍基地に連れてこられました。宇宙飛行実験の候補となった40匹のチンパンジーの中から、厳しいテストを経て選抜された6匹の内の1匹でした。飛行前は「#65」という番号で呼ばれていましたが、無事帰還後、ハムという名前が与えられました。

訓練は1959年7月から開始され、2歳のハムは、ライトや音に反応するよう訓練されました。青いランプが点滅したら5秒以内にレバーを押す、という課題を与えられ、間違った反応には軽い電気ショックが、正しい反応にはバナナが与えられました。

歴史的な宇宙飛行

1961年1月30日、マーキュリー計画の一環として、ハムはフロリダ州ケープ・カナベラルから宇宙へ打ち上げられました。飛行中のハムの健康状態と行動は、地上で詳細にモニターされました。飛行カプセル内の気圧が若干低下したものの、宇宙服によって保護され、地上からの指示に対して正確に操作を行い、飛行は成功しました。しかし、ロケットの燃料が予定より早く消費されたため、脱出用のタワーロケットが点火、軌道が大きくずれ、さらに電気系統の故障により、バナナ支給システムが混乱し、ハムは正しい行動をしていたにもかかわらず電気ショックを受けるという事態が発生しました。また、海面への落下時の衝撃や、カプセルへの浸水により、救助時には半ば溺れかかった状態でした。救出後、混乱したハムは、周囲のあらゆるものに噛み付くなど、興奮した様子を見せました。

その後

ハムの飛行から10ヶ月後には、エノスという別のチンパンジーが地球周回飛行に成功しました。ハムは、飛行後ワシントンDCの国立動物園、後にノースカロライナ動物園で17年間過ごしました。死亡後、軍病理学研究所で検視が行われ、骨格はスミソニアン博物館に保存され、遺体はニューメキシコ宇宙歴史博物館の前に埋葬されました。

また、ハムのバックアップに選ばれたメスのチンパンジー、ミニーは、NASAのチンパンジー繁殖計画に貢献し、多くの子供たちを育てました。ハムの功績は後世に語り継がれ、2008年にはアニメーション映画「スペース・チンプス」が制作され、主人公はハムの孫という設定で登場しました。さらに、同年にオレゴン州のフォークロックバンドが「Ham the Astrochimp」という曲を発表するなど、ハムは様々な形で人々に記憶されています。

ハムが残した遺産

ハムの宇宙飛行は、人類初の有人宇宙飛行に向けた大きな一歩となり、その勇気と貢献は、後世に語り継がれるべき偉業です。

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