ハリマ・ヤコブ

ハリマ・ヤコブ：シンガポール初の女性大統領

ハリマ・ヤコブ（Halimah Binte Yacob）は、1954年8月23日にシンガポールで生まれた政治家であり、同国史上初の女性大統領（第8代）として知られています。彼女の生い立ちとキャリアは、多様な民族が共存するシンガポール社会において、機会均等の重要性を象徴するものとして注目されています。

生い立ちと学歴

ハリマ・ヤコブは、インド系の父親とマレー系の母親の間に生まれました。幼少期に父親を亡くし、母親の手で育てられました。彼女は、シンガポール国立大学で法学士号を取得し、その後、労働組合や国際労働機関での勤務を経て、政治の世界へと足を踏み入れました。

政治家としてのキャリア

2001年、ハリマ・ヤコブはジュロン集団選挙区から国会議員に初当選しました。その後、地域開発・青年・スポーツ担当国務相や社会・家庭振興担当国務相といった要職を歴任し、2013年には国会議長に就任しました。これらの経験は、彼女が国政を担う上で重要な基盤となりました。

2017年大統領選挙

2016年の憲法改正により、大統領選挙の立候補資格が一部変更されました。具体的には、過去5回の選挙で大統領を輩出していない民族グループに属する候補者のみが立候補できるという規定が設けられました。この改正を受け、2017年の大統領選では、初代大統領ユソフ・ビン・イサーク以来、大統領を出していなかったマレー系の候補者のみが対象となりました。また、立候補には、政府要職を3年以上務めた経験、あるいは株主資本5億シンガポールドル以上の企業の会長や最高経営責任者の経験などの条件が設けられました。

この選挙で、ハリマ・ヤコブを含む複数の候補者が立候補を申請しましたが、立候補資格を満たしたのはヤコブのみでした。そのため、選挙は行われず、2017年9月14日に彼女は第8代大統領として就任しました。これは、シンガポールの歴史において画期的な出来事であり、女性が最高位の役職に就いた最初の事例となりました。

大統領就任後の活動

大統領就任後、ハリマ・ヤコブは、シンガポール国立大学の学長にも就任しました。また、2019年には、日本の即位礼正殿の儀に参列し、安倍晋三首相との会談も行いました。これらの活動を通じて、彼女はシンガポールの国際的な地位向上にも貢献しています。

発言と主張

ハリマ・ヤコブは、大統領選の際の記者会見で、自身の生い立ちについて語りました。彼女は、父親を亡くし、母親が屋台で働いて生活を支えたこと、自身も学生時代には屋台を手伝っていたことなどを明かしました。これらの経験から、社会が全ての人々に機会を与えることの重要性を強く感じたと述べています。彼女の言葉は、多くの人々に共感を呼び、シンガポール社会における多様性と機会均等への意識を高める上で重要な役割を果たしています。

ハリマ・ヤコブのキャリアは、困難な状況から立ち上がり、シンガポールの最高位に上り詰めた女性の物語です。彼女の存在は、性別や出自に関わらず、全ての人々が自らの可能性を追求できる社会の実現に向けた象徴と言えるでしょう。

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