ハルマゲドンの少女

『ハルマゲドンの少女』は、SF作家・平井和正が手掛けた異色の「シナリオノベル」です。平井自身が名付けたこの形式は、一種のリーゼシナリオと解釈できますが、通常のシナリオ形式とは異なり、後半では会話文のカギカッコ前の役名が省略されるなど、独特なスタイルを持っています。本作は、1983年から1984年にかけて『SFアドベンチャー増刊 平井和正の幻魔宇宙』に掲載され、当時10代だった泉谷あゆみが挿絵を担当しました。

概要

『ハルマゲドンの少女』は、幻魔大戦シリーズの一環として位置づけられ、漫画『幻魔大戦』（少年マガジン版）、小説『幻魔大戦』、『真幻魔大戦』を結びつける役割を担っています。シリーズの壮大な世界観をより深く理解するための重要な作品と言えるでしょう。

ハードカバー版の後書きによれば、平井和正が幻魔大戦シリーズの大作小説2作を並行して執筆していた際、白蟻退治に追われ、体調を崩したことがきっかけで、本作の着想を得たとのことです。小説という形式に対する葛藤もあったものの、シナリオ形式でインスピレーションが湧き上がってきたため、その流れに身を任せて執筆されたのが本作です。

ストーリー

物語は全3部構成で展開されます。

ハルマゲドンの少女: 渡米中の旅客機内で、幻魔が東三千子と木村市枝を襲撃します。しかし、17歳の東三千子は光の力で幻魔を退けます。その後、三千子の霊体は古代ギリシャへと飛び、アポロやクロノスと出会い、アポロの導きにより、2人は古代都市アリエスの時の関門から超空間へと移動します。

異次元彷徨: 超空間に到達した東三千子とクロノスは、『真幻魔大戦』の登場人物である亜由やジョージ・ドナー、そしてマザーと呼ばれる神のような存在と遭遇します。クロノスは時の関門を通り抜け、ムウへと辿り着きます。この部分は、『真幻魔大戦』第三部の前日譚として位置づけられています。

ビッグアップル壊滅: アメリカに到着した東三千子は、小説『幻魔大戦』の登場人物である杉村由紀やミスタ・メインと出会います。また、希望を失い、失意の中にいるルナとも再会します。幻魔の侵攻が本格化し、大地震によって日本との連絡が途絶え、隕石が降り注ぎます。そして、2時間20分後にはニューヨークが壊滅するという衝撃的な事実が明らかになります。この部分は、小説『幻魔大戦』、『ハルマゲドン』の後日譚として描かれています。

書誌情報

徳間書店からはハードカバー版（全2巻）が発売されました。

ハルマゲドンの少女 ［上］ （1986年12月） - ハルマゲドンの少女/異次元彷徨
ハルマゲドンの少女 ［下］ （1986年12月） - ビッグアップル壊滅

トクマノベルズ版（全3巻）では、「ファイナル幻魔大戦」のサブタイトルが付けられています。

ハルマゲドンの少女 1 （1988年12月） - ハルマゲドンの少女
ハルマゲドンの少女 2 （1988年12月） - 異次元彷徨
ハルマゲドンの少女 3 （1989年1月） - ビッグアップル壊滅

『ハルマゲドンの少女』は、平井和正の独特な世界観と、幻魔大戦シリーズの壮大な物語が融合した作品です。その実験的な形式と、シリーズ全体を繋ぐ重要な役割から、多くのファンに愛されています。

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