ハロルド・ギルマン

ハロルド・ギルマン：夭折のポスト印象派画家

ハロルド・ジョン・ワイルド・ギルマン (1876年2月11日 - 1919年2月12日) は、20世紀初頭のイギリスを代表するポスト印象派画家の一人です。人物画、室内画、風景画など幅広い題材を扱い、独特の色彩感覚と表現力で知られています。短い生涯ながら、イギリス美術史に重要な足跡を残しました。

生涯：芸術的探求の軌跡

ギルマンはイギリスのサマセット州ロードで生まれました。1896年からヘイスティングスの美術学校で学び、その後ロンドン大学のスレード美術学校に進学(1897-1901)。同校では、後に生涯の友人となるスペンサー・フレデリック・ゴアと出会い、共に研鑽を積みました。

1904年には、スペインに1年間滞在。17世紀の巨匠、ディエゴ・ベラスケスの作品を熱心に研究し、その影響は後の作品にも見て取れます。帰国後、ロンドンのカムデン・タウンを拠点に活動を始め、ウォルター・シッカートらと親交を深めました。この出会いが、後に彼を「カムデン・タウン・グループ」へと導きます。

1910年、ロンドンで開催されたポスト印象派の展覧会は、ギルマンに大きな衝撃を与えました。この経験をきっかけに、チャールズ・ジナーと共にパリへ旅立ち、ゴッホ、ゴーギャン、シニャックといった巨匠たちの作品に直接触れ、自身の画風を大きく変貌させます。それまでのシッカートの影響から脱却し、ポスト印象派の鮮やかな色彩と大胆な筆致を取り入れました。ゴアとの共同展開催など、活発な活動を展開しました。

しかし、1919年、スペイン風邪の流行により、わずか43歳でその生涯を閉じました。

作品：ポスト印象派の息吹

ギルマンの作品は、ポスト印象派の強い影響を受けながらも、彼自身の独特の感性が融合した、魅力的なものです。初期の作品には、写実的な描写が見られますが、スペイン滞在やポスト印象派との出会いを経て、次第に色彩が豊かになり、筆致も大胆になっていきます。人物画では、モデルの心理状態を繊細に表現し、室内画や風景画では、独特の光と影の表現で、静謐で美しい世界を描き出しています。

彼の作品は、現代においても高い評価を受けており、多くの美術館やコレクターによって収集されています。その短い生涯の中で、彼は多くの傑作を生み出し、イギリス美術史に大きな貢献を果たしました。夭折したことが惜しまれる、才能あふれる画家でした。

カムデン・タウン・グループ

1911年に結成された「カムデン・タウン・グループ」は、ウォルター・シッカートを中心としたイギリスの画家たちのグループです。ギルマンは創立メンバーの一人として、グループ展に参加し、現代美術の発展に貢献しました。このグループは、当時のイギリス美術界において、新しい表現様式を探求する重要な役割を果たしました。

参考文献

Dictionnaire Bénézit, Dictionnaire des peintres,sculpteurs, dessinateurs et graveurs, vol. 6, éditions Gründ, janvier 1999, 13440 p. (ISBN 2-7000-3016-8), p. 127
Paul Robert, Dictionnaire universel de la peinture, vol. 2, Paris, Dictionnaire Le Robert Paris, 1975, 2500 p. (ISBN 2-85036-002-3)

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