ハロルド・シップマン

ハロルド・シップマン事件：闇に葬られた命

ハロルド・フレドリック・シップマン（1946年1月14日 - 2004年1月13日）は、イギリスの医師であり、連続殺人犯として知られています。彼は「ドクター・デス」とも呼ばれ、その犯行はイギリス社会に大きな衝撃を与えました。

生い立ちと医師への道

シップマンは、イングランドのノッティンガムで生まれ、会社員の父親を持つ家庭で育ちました。彼は幼い頃から優秀な学生であり、17歳で母親が肺がんで亡くなったことが、彼の人生に大きな影響を与えたと言われています。1965年、リーズ大学医学部に入学。在学中に恋人を妊娠し、1966年に結婚。4人の子供をもうけました。1970年に大学を卒業後、ポンテフラクトの診療所で医師としてのキャリアをスタートさせました。

転落の始まり

順風満帆に見えたシップマンの人生でしたが、1974年頃から異変が生じ始めます。彼は時折意識を喪失するようになり、勤務先の病院で同僚の麻薬中毒を知ると、処方箋を偽造して麻薬を手に入れようとしました。この行為が発覚し逮捕、罰金刑を受け、病院を解雇されます。しかし、当時の医師会は彼の医師免許を剥奪せず、厳重注意の書面を送付するにとどまりました。その後、シップマンはヨークで精神科に通い、薬物乱用者更生治療を受けました。

連続殺人の発覚

1998年、シップマンの同僚医師が、彼の担当患者の死亡率が異常に高いことに気づき、検死官に相談しました。捜査の結果、シップマンが患者を殺害している疑いが浮上し、同年9月7日に逮捕されました。捜査が進むにつれて、彼の犯行の全貌が明らかになっていきました。シップマンが診察した患者のうち、41人が予兆もなく死亡していたことが判明。2002年7月19日、政府は被害者が少なくとも215人に達すると発表しました。殺害されたとされる493人のうち、自然死と判断されたのは210人、38人は判定不能。残る215人の内訳は、男性が44人、女性が171人でした。被害者の年齢は47歳から93歳と、高齢者が多かったことも特徴です。

動機の謎と裁判

裁判でシップマンは一貫して無罪を主張し、動機については一切語りませんでした。2000年1月30日、彼は15人の女性患者殺害について有罪判決を受け、終身刑を言い渡されました。しかし、彼の犯行動機は最後まで謎に包まれたままでした。

獄中での自殺

2004年1月13日、シップマンはウェイクフィールド刑務所内で首つり自殺を遂げました。57歳でした。彼の死によって、事件の真相は永遠に闇に葬られることとなりました。

ハロルド・シップマン事件は、医療従事者による連続殺人という前代未聞の事件であり、医療倫理や患者の安全管理体制について、社会全体で再考するきっかけとなりました。事件後、イギリスでは医療制度の見直しや、医師の監督体制の強化など、さまざまな対策が講じられています。

関連項目

シリアルキラー
ヘルスケア・シリアルキラー

外部リンク

Shipman Inquiry
BBC — The Shipman Murders
List of suspected murders
Caso abierto, Dr Death: The Shipman Case

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