ハワード・ウィンストン

ウェールズが生んだ不屈のボクサー、ハワード・ウィンストンMBEは、1939年4月15日にマーサー・ティドビルで生を受け、2000年 9月30日にその生涯を閉じた、元プロボクサーである。特にWBC世界フェザー級王者としての功績が知られている。

アマチュアからプロへ、そして困難の克服

アマチュアで輝かしい実績を残した後、ウィンストンは1959年にプロボクシングの世界へ足を踏み入れた。彼のキャリアを語る上で欠かせないのは、若き日に遭遇した壮絶な事故である。これにより右手の指3本を失うという、ボクサーにとって致命的とも言えるハンディキャップを負った。しかし、ウィンストンはこの困難に屈することなく、残された機能を最大限に活かすため、特に左の技術を徹底的に磨き上げた。ジャブやストレートといった左のブローは鋭さを増し、彼の最大の武器となった。この不断の努力が、その後の輝かしいキャリアの礎を築いたと言えるだろう。

国内、欧州、そして世界への挑戦

ハンディキャップを乗り越えたウィンストンは、着実にその実力を証明していった。まず英国王者となり、さらに英連邦タイトル、そしてヨーロッパ王者へとその版図を広げた。国内、大陸の頂点を極めた彼は、次なる目標として世界のベルトを強く意識するようになった。

彼のキャリアにおいて、避けては通れないのがメキシコの偉大なフェザー級王者、“赤い鷹”ビセンテ・サルディバルとの対戦である。ウィンストンはサルディバルの持つWBA・WBC世界フェザー級王座に三度にわたり挑戦した。初対戦は1965年9月7日、敵地メキシコでの戦いとなったが、激闘の末に判定負けを喫した。約二年後の1967年6月15日には母国ウェールズで再戦に臨んだが、再び判定で敗れた。そして同年10月14日、三度目の正直を期して再びサルディバルに挑んだが、この試合は壮絶な打撃戦となり、12ラウンドに力尽きKO負けを喫した。三度にわたる挑戦は、いずれもサルディバルの強さの前に涙を呑む結果となったが、ウィンストンが見せた不屈の闘志と世界最高レベルでの戦いは、多くのボクシングファンの心を捉えた。

悲願の世界王座獲得と短命な栄光

サルディバルが現役を引退し、WBC世界フェザー級王座が空位となると、ウィンストンに再び世界王座挑戦の機会が巡ってきた。相手は、奇しくもサルディバルに苦戦を強いた経験を持つ日本の強豪、関光徳であった。1968年1月23日、ロンドンで行われたこの王座決定戦は、両者にとって待ち望んだ世界タイトルの懸かった重要な一戦となった。

試合は白熱した攻防となったが、9ラウンドに関光徳が出血。レフェリーは試合をストップし、ハワード・ウィンストンが9回TKO勝利で遂に悲願の世界王座を獲得した。しかし、この試合のストップはやや早すぎるのではないかという議論を呼び、特にリングサイドで観戦していた前王者サルディバルが、関の傷は試合続行不可能なほどではないとして猛烈な抗議を行ったと伝えられている。物議を醸した結末ではあったものの、ウィンストンが世界王者となった事実は揺るがなかった。

念願の世界王者となったウィンストンであったが、その栄光は長く続かなかった。1968年7月24日に行われた初防衛戦で、ホセ・レグラを相手に5ラウンドでKO負けを喫し、わずか半年あまりで王座を失った。世界王者としての期間は短命に終わったが、彼のボクシングキャリア全体を通して見せた、ハンディキャップを乗り越える不屈の精神、そして世界トップクラスの選手たちとの激闘は、今なお多くの人々の記憶に残っている。

通算戦績は61勝（27KO）6敗という素晴らしい記録を残している。

関連項目

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