ハンス＝ディートリヒ・ゲンシャー

ハンス＝ディートリヒ・ゲンシャー：東西ドイツ統一に貢献した政治家

ハンス＝ディートリヒ・ゲンシャー（1927年3月21日 - 2016年3月31日）は、ドイツ連邦共和国の政治家であり、自由民主党（FDP）の党首として、ドイツの政界で重要な役割を果たしました。彼は、ヘルムート・シュミット、ヘルムート・コールという2人の首相の下で、1974年から1992年までの18年間、副首相兼外務大臣を務めました。これは、ドイツ史上最長の在外相在任記録です。

生涯

ゲンシャーは、ハレ近郊のライデブルクで生まれました。第二次世界大戦中には、ヒトラーユーゲントに参加し、ドイツ国防軍で兵役につきました。戦後、彼は法学と経済学を学び、西ドイツへ亡命。その後、自由民主党（FDP）に入党し、政治家としての道を歩み始めました。

政治家としてのキャリア

1969年、ゲンシャーはヴィリー・ブラント内閣で内務大臣として初入閣。ミュンヘンオリンピック事件への対応や、対テロ特殊部隊GSG-9の創設に尽力しました。1974年には、外務大臣兼副首相に就任し、ヘルシンキでの全欧安全保障協力会議条約の締結交渉に参加するなど、国際舞台で活躍しました。

1982年、FDPはSPDとの連立を解消し、ヘルムート・コール率いるキリスト教民主同盟（CDU）との連立に転換。この政権交代劇において、ゲンシャーは中心的な役割を果たしました。

ドイツ再統一への貢献

ゲンシャーの最大の功績は、冷戦終結とドイツ再統一に大きく貢献したことです。彼は、東欧革命からドイツ再統一に至るまで、卓越した外交手腕を発揮し、ヨーロッパにおける冷戦状態に終止符を打つことに尽力しました。1989年、ハンガリー・オーストリア国境が開放された際、多数の東ドイツ市民が西ドイツへ亡命。ゲンシャーは、チェコスロバキア政府との間で、東独市民の国境通過について合意し、プラハの西ドイツ大使館から亡命希望者に向けて演説を行いました。

ユーゴスラビア内戦への関与

ユーゴスラビア内戦においては、欧州共同体（EC）内の合意形成を待たずに、クロアチアとスロベニアの独立を早期に承認することを主張。ドイツの単独承認は、ユーゴスラビア破滅のきっかけを作ったとの批判もあります。

政界引退後

1992年、ゲンシャーは健康上の理由で外相を退任。1998年に政界を引退し、弁護士として活動しました。2016年3月31日、心不全のため89歳で死去しました。

ハンス＝ディートリヒ・ゲンシャーは、ドイツの政治史において、最も重要な人物の一人です。彼の外交手腕と政治的リーダーシップは、ドイツだけでなくヨーロッパ全体の歴史に深い足跡を残しました。

家族・表彰

1958年に結婚し一女をもうけるが1966年に離婚。1969年に再婚。
ドイツ連邦共和国功労勲章大功労十字星大綬章受章。
レジオンドヌール勲章大十字章。
ライプツィヒ大学、シュチェチン大学より名誉博士号。

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