ハンニバル (小説)

小説『ハンニバル』の概要

トマス・ハリスによる『ハンニバル』（原題: Hannibal）は、1999年に発表された、アメリカの小説です。本作は、著者の代表作である『ハンニバル・レクター・シリーズ』の第3作目であり、名作『羊たちの沈黙』の続編と位置づけられています。物語は、連続殺人鬼バッファロー・ビルの逮捕から10年後のアメリカを舞台に繰り広げられます。

物語の背景

物語の始まりは、FBI特別捜査官クラリス・スターリングが麻薬組織との銃撃戦に臨んでいる場面からです。彼女は、危険な銃撃戦の中で赤ん坊を抱えた女性ボスを射殺します。この事件がきっかけで、クラリスはマスコミからの厳しい批判を浴びることになります。一方、FBI内部では上官のポール・クレンドラーが嫉妬と執念からクラリスを追い込む姿が描かれます。

傷心を抱えるクラリスは、ハンニバル・レクター博士から慰めの手紙が届くことになります。その手紙により、彼がイタリアのフィレンツェに潜伏していることを知った彼女は、再び彼の逮捕を果たすためにひそかに調査を開始します。

ハンニバル・レクターの運命

レクターを狙うのは、大富豪であり彼に恨みを持つメイスン・ヴァージャーです。メイスンは高額な懸賞金をかけ、レクターへの復讐を計画します。物語はここで、イタリアのパッツィ刑事がレクターの手がかりを掴むくだりへと進んでいきますが、彼もまたレクターに見破られ、悲劇的な運命を迎えることになります。

逃亡中のレクターは、クラリスが自分を追いかけていることを察知して、彼女との接触を果たすことになりますが、メイスンはそれを妨害する計画を立てます。レクターは捕らえられ、拷問を受けながらも自らの記憶の世界に逃げ込むことで痛みを忍びます。

クラリスとレクターの絆

その後、クラリスは奮闘しレクターを助けることになりますが、彼女自身も負傷してしまいます。傷ついた彼女は、レクターによって手当てされ、その際に二人の間には複雑な感情が芽生えます。メイスンは、自らの過去のトラウマを抱えた妹により復讐を果たされることになります。また、クレンドラーはレクターの手によりその知能を蝕まれ、最終的に命を落とします。

この物語では、クラリスとレクターの心の傷が癒されていく様子が描かれ、互いの暗い過去を抱える二人が深く結びついていく様が印象的です。クラリスは父の死という苦しみをレクターの手によって和らげられ、またレクターはクラリスを通じて失った妹の存在を思い起こします。

結末

最後には、クラリスはレクターから解けない暗示を受け、彼と共に新たな生活をスタートします。彼らの関係は単なる共犯者同士のものから、より深い結びつきへと進展していきます。『ハンニバル』は、サスペンスと心理的な葛藤が見事に組み合わさった作品であり、読者に強烈な印象を与えます。

余談

本作には、フィレンツェの怪物事件という未解決の連続殺人事件が引用されており、物語にリアリティと重厚感を与えています。

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