ハーバート・オースチン

ハーバート・オースチン卿：オーストラリアから英国自動車産業の巨匠へ

ハーバート・オースチン（1866年-1941年）は、20世紀前半の英国自動車産業を代表する人物の一人です。農家の息子として生まれた彼は、オーストラリアで技術者としてのキャリアをスタートさせ、その後英国に戻り、ウーズレー社を経て、自身の名を冠したオースチン・モーター・カンパニーを設立、英国自動車産業に革命を起こしました。

オーストラリアでの技術者修行

オースチンはバッキンガムシャーで生まれ、その後ヨークシャーに移住しました。17歳の時、オーストラリアへ渡り、メルボルンで叔父の働く技術会社で働き始めます。印刷機械やガスエンジンなどを扱う会社を経て、蒸気機関車や金鉱掘削用具などを製造する鋳物会社に勤務しました。

彼は絵を描くことも好きで、美術学校にも通っていました。また、橋梁デザインコンペにも応募した経験があります。メルボルンで結婚し、家族を築き、機械工房の工場長として機械の改良にも携わりました。羊毛刈取機の改良に成功し、その特許をウーズレー羊毛刈取機械会社に売却することで、同社の株主となりました。

ウーズレー社と自動車への挑戦

1893年、オースチンはウーズレー社とともに英国に戻り、工場長として勤務しました。ウーズレー社はその後、自転車製造にも着手しますが、オースチンは自動車に興味を持つようになり、私的に自動車の試作を始めるようになりました。彼が製作した自動車はウーズレー社に買い取られ、販売されることになります。その後、ウーズレー社は自動車部門をビッカーズに売却し、ウーズレー・ツール&モーター・カンパニーが設立されました。オースチンは同社でも勤務を続けました。

オースチン・モーター・カンパニーの設立と成功

1905年、オースチンはウーズレー社を退社し、自身でオースチン・モーター・カンパニーを設立します。バーミンガム郊外のロングブリッジに工場を設立し、多様な車種を生産しました。第一次世界大戦中は戦時生産に協力し、戦後も低価格車「オースチン7」の大ヒットによって会社の成長を牽引しました。

政治活動と晩年

オースチンは保守党の下院議員も務めましたが、議会での演説は一度もありませんでした。1936年にはロングブリッジのオースチン男爵に叙爵されました。第二次世界大戦においては、航空機や軍用車両などの生産で国に貢献しました。1941年、心臓発作と肺炎により亡くなりました。

オースチンの遺産

オースチンは、オーストラリアでの技術者としての経験から英国自動車産業のトップに上り詰めた、類まれな人物です。彼の設計した自動車は、世界中に輸出され、英国自動車産業の発展に大きく貢献しました。「オースチン7」の成功は、大衆向けの低価格車の生産という新しい市場を開拓しただけでなく、後の英国自動車産業の発展に大きな影響を与えました。彼の功績は、今もなお、英国自動車産業の歴史に刻まれています。彼の業績は、単なる自動車製造にとどまらず、英国経済や社会にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

Lambert, Z.E. & Wyatt, R.J. (1968). Lord Austin - the Man, Altrincham: Sidgewick and Jackson Limited.
Sharratt, Barney (2000). Men and Motors of the Austin: The inside story of a century of car making at Longbridge. Sparkford: Haynes Publishing.

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