ハーレーダビッドソン・VRSC

VRSC（ブイアールエスシー）とは

VRSC、通称V-RODファミリーは、アメリカのオートバイメーカー、ハーレーダビッドソンが製造した、初の水冷エンジンを搭載したオートバイのシリーズです。ハーレーダビッドソンの伝統的な「空冷VツインOHVエンジン」というイメージを大きく変え、高性能な水冷DOHCエンジンを搭載したモデルとして登場しました。このシリーズは、VRSCA、VRSCB、VRSCR、VRSCD、VRSCAW、VRSCDX、VRSCFの7機種がラインナップされ、2009年にはVRSCAW、VRSCDX、VRSCFの3車種が販売されました。また、メーカー純正の市販ドラッグレーサーであるVRXSEも存在します。

2017年モデルをもって、このVRSCシリーズは生産を終了しました。

車両解説

VRSCシリーズは、従来のハーレーダビッドソンのイメージを覆し、「鼓動」「振動」「空冷」「VツインOHVエンジン」といった要素を刷新しました。高回転型DOHCエンジンの滑らかなフィーリングと、他社製の大型バイクに対抗できるパワフルな走行性能が特徴です。車体デザインにも工夫が凝らされており、空冷エンジンにはないラジエターをスタイリッシュに組み込み、ハーレーらしい堂々とした風格を維持しています。このデザインは、ハーレーダビッドソンのデザインを統括するウイリー・G・ダビッドソン氏をして「正しくこれはハーレーだ」と言わしめるほどでした。

開発初期には、1990年代にAMAスーパーバイクレースに参戦していたVR1000のエンジンをダイナモデルのフレームに搭載してテストした記録映像も残っています。

モデル一覧

2002年

ポルシェと共同開発した水冷V型4気筒DOHCエンジンをルーツとし、改良を重ねた水冷V型2気筒 DOHCエンジン（レボリューションエンジン）を搭載したVRSCAが誕生しました。これはハーレーダビッドソン初の市販型水冷DOHC Vツインエンジンでした。

2004年

VRSCAの廉価版として、メッキパーツをブラックアウトしたVRSCBが販売されました。VRSCAよりも約20万円安い価格設定と、黒を基調としたコンセプトが人気を博し、現在のナイトロッドスペシャルの原型となりました。

2005年

高性能エンジンながらコーナリング性能に課題のあったVRSCの弱点を克服するため、よりスポーツ性を高めたVRSCR（ストリートロッド）が登場しました。馬力アップやブレンボ製ブレーキの搭載、バックステップに近い乗車姿勢、車高アップなどの改良が行われましたが、クルーザーのイメージが強かったVRSCシリーズとは異なり、市場には受け入れられず2007年に販売終了となりました。このストリートロッドの登場により、「V-Rod」という呼称はVRSCAまたはVRSCBを指すようになりました。

2006年

CVOモデルとしてVRXSE（デストロイヤー）が登場。また、VRSCBの後継として、さらにブラックの度合いを強めたVRSCD（ナイトロッド）が登場しました。VRSCAよりも安価ながら、黒でまとめられた外観や扱いやすいミッドコントロールステップが人気を集めました。この年から全モデルにブレンボ製ブレーキが採用されました。

2007年

VRSCD（ナイトロッド）のメッキパーツをほぼすべてブラックアウトし、後輪を240mmのワイドサイズに変更したVRSCDX（ナイトロッドスペシャル）が後継モデルとして登場しました。また、2002年から販売されていたVRSCAも後輪を240mmサイズに変更したVRSCAW（V-ロッド）として販売されました。

2008年

排気量が1246ccにアップし、スリッパークラッチが新しく装備されました。また、2007年モデルではオプションだったABSが標準装備となり、エキゾーストパイプが変更されました。ハーレーダビッドソン105周年記念車として、記念カラーとバッジが採用されました。VRSCAWはフロントホイールがスポークホイールに変更されました。

2009年

VRSCF（ブイロッドマッスル）が登場。車高を低く保ちつつ左右二本出しのエキゾーストや倒立フロントフォーク、一体型リアコンビネーションLEDランプなどが装備されました。

2010年

VRSCシリーズの源流となるVRSCAWがカタログから姿を消し、生産終了となりました。

2011年

VRSCF（ブイロッドマッスル）とVRSCDX（ナイトロッドスペシャル）のみの生産となりました。この年から標準装備のタイヤがダンロップからミシュランに変更され、若干タイヤの耐久性が向上しました。

2012年

VRSCDXがモデルチェンジされ、VRSCシリーズ10周年を記念したVRSCDX ANV（10thアニバーサリーエディション）が販売されました。従来型からの主な変更点として、ハンドルグリップとステップの位置が変更され、フロントフォークが倒立式に変更されました。

VRSCファミリー

VRSCA - 2001年登場。「アノダイズドアルミ」と呼ばれるクリアーアルマイト仕上げのアルミ外装が特徴。2006年モデルまで生産。
VRSCB - ハンドルバーがライザー支持に変更。エンジンが黒塗装、カバー類がポリッシュ仕上げ。
VRSCD - Bモデルをベースに、ミッドコントロール、ハイウェイペグ、ビキニカウルを装備。2008年モデルまで生産。
VRSCF - V-RODマッスルと表記される。
VRSCR - Dモデルをベースに、倒立フロントフォーク、新設計リアサスペンション、スポーツバイク並みの車高。ホイールは中空多スポーク型、専用タイヤが純正指定。
VRSCAW - V-RODとも表記。2007年モデルから登場。Aモデルがベースで、リアに240ミリワイドタイヤ、大容量燃料タンクを搭載。
VRSCDX - 2007年モデルから登場。AWモデルがベースで、フォワードコントロール、リアに240ミリワイドタイヤ、大容量燃料タンク、艶消し黒塗装仕上げの専用エキゾーストシステム。ナイトロッドスペシャルとも表記。
VRXSE - 2006年モデルから登場。Aモデルベースの市販ドラッグレーサー。クローズドコース専用。

日本仕様の2008年モデルでは、本国ではオプション装備であった前後ABSが全車標準装備となり、各モデルの名称がVRSCAWA、VRSCDA、VRSCDXAとなりました。

脚注

外部リンク

Harley-Davidson Japan
Harley-Davidson USA
* ハーレーダビッドソン公式サイト内のVRSCモデルのページに変更してください'>VRSC商品ページ

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