バイス (映画)

映画『バイス』の概要

『バイス』（原題：Vice）は、2018年に公開されたアメリカ合衆国の伝記映画で、アダム・マッケイが監督を務め、クリスチャン・ベールがディック・チェイニー役を演じています。チェイニーは第43代アメリカ合衆国大統領であるジョージ・W・ブッシュの下で副大統領として活躍し、強大な影響力を持つ一方で賛否を呼ぶ存在でもありました。本作は彼の生涯を描くことで、政治の裏側や権力の本質に迫ります。

ディック・チェイニーの実像

ディック・チェイニーは「アメリカ史上最強で最凶の副大統領」として知られています。彼はワシントンで重要な役割を果たし、政治のダイナミズムを大きく変えましたが、同時に「史上最悪の副大統領」とも評されることがあります。彼の政治的な選択や行動は、今日の国際秩序に影響を与えただけでなく、多くの人々の悲劇をも生んでいます。本作は複雑な彼のキャラクターを掘り下げ、彼の影響力の全貌を描き出そうとしています。

あらすじ

映画は、架空の退役軍人カートの視点からストーリーが展開されます。1963年、名門イェール大学から中退したチェイニーはアルコール依存症に悩まされ、ワイオミング州で働き始めます。彼の妻リンの強い言葉によって人生の方向転換を余儀なくされるところから彼の物語が始まります。

その後、チェイニーはニクソン政権下のホワイトハウスでインターンとしてのキャリアをスタート。ラムズフェルドの指導の下で彼は政治的手腕を磨き、権力の真の中心部に近づいていきます。特に「一元的行政府理論」という考え方に触れ、チェイニーは大統領としての権限がどのように振る舞われるかを理解していきます。

1976年には選挙で当選し、連邦下院議員となります。この時、彼は初めて心臓発作を経験。政治家としての努力を続ける妻リンの奮闘が描かれる一方、チェイニー自身は次の選挙での出馬を夢見るものの、最終的にはハリバートン社のCEOになります。

チェイニーが副大統領に就任するきっかけとなった2000年の米国大統領選挙では、ジョージ・W・ブッシュの側近として活動します。彼の主導でアフガニスタンやイラクへの侵攻が始まり、これにより多くの議論や悲劇が生まれました。様々な出来事を通じて、チェイニーの政治としての選択が多くの人々の命に影響を与えたことが描かれています。

映画のメッセージ

『バイス』は、権力がどのように抑圧や苦痛を生むのかを問いかけています。チェイニーの行動は、彼自身の最後の瞬間さえも影響しています。また、彼の娘たちの関係や同性婚に対する見解も探求され、個人の価値観と政治が交錯する様子が描かれています。

評価

本作は批評家から賛否が分かれましたが、クリスチャン・ベールの演技力には高い評価が寄せられています。彼の役作りには40ポンドの体重増加が含まれており、体形だけでなく精神的な変化も表現されています。

映画は興行成績としても65%の支持率を得ており、観客や批評家の心を掴んだ理由を考察する余地を残しています。『バイス』は、ただの伝記映画ではなく、観客に選択の重要性や権力の本質を問いかける作品として位置付けられています。

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