バガテル

バガテル（Bagatelle）は、クラシック音楽において、主にピアノなどの器楽のために作曲された性格的小品を指します。フランス語で「ちょっとしたもの」「つまらないもの」という意味を持ち、転じて、気軽に演奏できる軽快な楽曲を指す言葉として用いられます。日本語では「断章」と訳されることもあります。

バガテルは、大曲を作曲する過程で生まれたアイデアや、作曲家のふとした思いつきを手慰みに書き留めたものが原型となっていることが多いです。そのため、作曲家自身も当初は破棄するつもりだった楽想が、最終的に作品として残されることも少なくありません。このような経緯から、バガテルという名称には、作曲家の謙遜や韜晦（とうかい）の意図が込められている場合もあります。

形式に制約はなく、演奏時間も3分程度のまとまったものから、ごく短い断片的なものまで様々です。自由な形式で、作曲家の個性や感情が表現される点が、バガテルの魅力と言えるでしょう。

バガテルは、多くの作曲家によって作曲されており、以下に代表的な作品を挙げます。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
7つのバガテル 作品33
バガテル『エリーゼのために』イ短調 WoO 59
11の新しいバガテル 作品119
6つのバガテル 作品126

ベートーヴェンの作品は特に有名で、中でも『6つのバガテル 作品126』は、ベートーヴェンがピアノソナタ全曲を書き終えた後の、晩年の重要なピアノ作品として知られています。

ヨハン・ネポムク・フンメル: 6つのバガテル 作品107
フランツ・リスト: 無調のバガテル S. 216a
カミーユ・サン＝サーンス: 6つのバガテル 作品3
ベドルジハ・スメタナ: 8つのバガテルと即興曲 作品6
アントニン・ドヴォルザーク: バガテル 作品47, B 79
ジャン・シベリウス
10のバガテル 作品34
6つのバガテル 作品97
エルンスト・フォン・ドホナーニ: 冬の輪舞（10のバガテル） 作品13
バルトーク・ベーラ: バガテル 作品6
ジョルジュ・オーリック: 5つのバガテル
アントン・ヴェーベルン: 弦楽四重奏のための6つのバガテル
リゲティ・ジェルジュ: 木管五重奏のための6つのバガテル
* ジェラルド・フィンジ: クラリネットとピアノのための5つのバガテル

これらの作品以外にも、数多くのバガテルが作曲されており、作曲家の個性や時代背景を反映した、多様な音楽を楽しむことができます。

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