バスチーユの象

バスチーユの象

バスチーユの象（フランス語: Éléphant de la Bastille）は、1813年から1846年にかけてパリに位置し、注目を集めた巨大なモニュメントです。このモニュメントは、ナポレオン・ボナパルトが1808年に思いついたもので、当初彼は青銅でできた彫刻をバスチーユ広場に設置する計画を立てました。しかし、実際には石膏で作られた模型が建設され、24メートルという高さを誇りました。この大きな像は人々の目を引き、後にヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』に登場することによってその存在は永遠のものになりました。現在、バスチーユの像そのものは存在していませんが、その土台の一部は残されています。

創設の背景

1789年7月にバスチーユが陥落した際、新たな記念碑を設けるのか、過去の遺物をそのまま残すのかが議論されました。この時、ピエール=フランソワ・パロイがバスチーユの解体を請け負い、解体で出た材料はコンコルド橋の建設に利用されました。残りの材料はパロイが販売し、解体作業には約1,000人の労働者が従事しました。1792年には、バスチーユ広場として新たに生まれ変わりましたが、元の要塞はその面影を残すのみとなりました。1793年には「再生の泉」というエジプト風の泉が設置され、女性の彫刻が美しさを演出しました。

ナポレオンは都を刷新するため、様々な計画を考案しましたが、特に自身の戦勝を象徴するモニュメントに特別な関心を持っていました。彼は、獲得した戦争の大砲を溶かして鋳直し、高さ24メートルの青銅の象を設けることを希望しました。また、足元には階段を設けて観光客が像の背中の展望台に上れるようにすることも計画しました。

建設作業

このプロジェクトはドミニク・ヴィヴァンが監督を務め、最初の設計者にはジャック・セルリェが選ばれました。1810年から基礎工事が始まり、1812年には天井部分や水道などが完成しましたが、セルリェは更迭され、その後ジャン=アントワーヌ・アラヴォワーヌが新たに設計を担当します。アラヴォワーヌは、完成形のイメージを具体化するために、ピエール=シャルル・ブリダンを雇い、実物大の模型を作成させました。この模型は1814年に完成し、象の足元で警備に当たっていた衛兵ルバスールが模型の見守りをしていました。

しかし、ナポレオンが1815年のワーテルローの戦いで敗れたため、象の本体の建設は中断を余儀なくされます。その後、アラヴォワーヌはこの計画の再開を模索し続けたものの、周囲からは新たな支援者は現れませんでした。市議会は1841年や1843年においても、青銅や鉄、銅を使用して像を完成させる道を探るものの、いずれも支持を得られず、その夢は叶うことがありませんでした。

境遇の変化

1820年代末には、周辺住民から象の撤去を求める声が上がり、生息していたネズミが住民の家に侵入するなどの問題が指摘されました。模型の象は1846年までその場にあり続けましたが、この頃には著しく劣化していました。

その後、バスチーユの象の足元は撤去されることなく、2000年代に入り革命の記念柱の基礎として使用され続けています。バスチーユの象は、ヴィクトル・ユゴーの名作『レ・ミゼラブル』でも言及され、象徴的な存在となりましたが、作品内での扱いは必ずしも肯定的ではなく、当時の社会に対するわずかな批評ともとれます。

2012年4月、映画『レ・ミゼラブル』のセットとしてイギリス・グリニッジに小型バージョンの象の複製が作られました。

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