バチカンにおける死刑

バチカンおよび教皇領の死刑制度の歴史

バチカンと教皇領は一つの国家として捉えられ、その歴史を追うことにより、特に死刑制度についての変遷が見えてきます。現代のバチカンでは死刑が廃止されていますが、教皇領の歴史を通じてさまざまな影響を受けてきました。カトリック教会の教義は、死刑の是非について複雑な見解を有しています。

死刑に関する教義の変遷

カトリック教会の伝統的な立場は、報復目的の死刑を否定しつつも、犯罪の予防や威嚇の観点から死刑を許容するものでした。この教義は長い間維持されていました。教皇領が国家としての形を整えていった12世紀ごろには、すでに死刑制度が存在していました。近代においては、終身刑により再犯防止や他の犯罪者に対する威嚇が十分に機能するとの見解が台頭しました。このため、「すべての命は神聖である」との立場から死刑は否定的に扱われるようになりました。また、現代における死刑の多くが報復行為に過ぎないということにも注目され、教会は「死刑は憎しみと復讐心の具現化であり、罪を以て罪を裁くことは殺人である」と主張しています。

教皇領での死刑の歴史

1798年、教皇領はフランス軍によって侵略され、ローマ共和国が樹立されました。この際、フランス式のギロチンが持ち込まれました。その後、ナポレオンの体制崩壊によって教皇領は復活し、1816年10月に強盗殺人犯トンマーゾ・ボルゾーニに対して初めて死刑が執行されました。その後の1868年11月24日には、ジュゼッペ・モンティとガエターノ・トニェッティの二人に対してローマで最期の死刑が実行されました。1870年、イタリアが教皇領を没収したことで、教皇領における死刑制度は実質的に消滅しました。

バチカンの死刑制度

1929年、ラテラノ条約が締結され、バチカンとしての地位が確立されました。バチカンでは1929年から1969年まで、ローマ教皇の暗殺・暗殺未遂に対してのみ死刑が存続していましたが、その実際の判決が出ることはありませんでした。

死刑執行の方法

歴史的に、教皇領では1810年以前に斧を使用した斬首刑が行われ、1810年以降はギロチンによる斬首刑が採用されました。これらの執行方法は、政治的・社会的な背景とともに、時代の流れに応じて変わっていきました。

関連項目

教皇領とバチカンにおける死刑制度の話は、広く死刑存廃問題や世界の死刑制度の現状とも関連しています。国家や宗教における倫理観や法制度が、この重要なテーマにどのように影響を及ぼしているかを考えることが求められます。

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