機械要素におけるバックラッシュ:その影響と低減策
機械を構成する
歯車や送りねじといった要素間には、意図的に隙間が設けられている場合があります。この隙間をバックラッシュ(またはバックラッシ)と呼びます。バックラッシュは、歯同士の干渉を防ぎ、機械の動作を円滑にするために必要不可欠な要素です。しかし、大きすぎると様々な問題を引き起こすため、その適切な管理が機械設計において重要な課題となります。
バックラッシュが引き起こす問題点
バックラッシュが大きすぎると、以下の問題を引き起こします。
振動・騒音の発生: 隙間が大きいために、
機械要素が動作中にガタつきが生じ、
振動や
騒音が発生します。これは、機械の
寿命を縮めるだけでなく、作業環境の悪化にもつながります。
位置決め精度の低下: バックラッシュは、ロストモーション(正逆方向の位置決めにおける誤差)の要因となります。特に精密な位置決めが要求される機械では、深刻な問題となります。
機械の摩耗: 大きなバックラッシュは、
機械要素への衝撃や負荷を増大させ、摩耗を促進します。
バックラッシュ低減のための工夫
バックラッシュは、多くの場合必要悪と捉えられます。そのため、様々な工夫が凝らされ、バックラッシュを低減(あるいは解消)する
技術が開発されてきました。これらは総じて「ノンバックラッシュ」や「バックラッシュレス」と呼ばれています。代表的な
技術を以下に紹介します。
インボリュート歯車: インボリュート
歯車は、歯の形状がバックラッシュを小さく抑える設計になっているため、バックラッシュ低減に効果的です。
ねじの遊び調整: めねじの一部を切り取ることで、ねじの遊びを調整し、バックラッシュを小さくすることができます。
シザーズギヤ: 互いに噛み合う同形同軸の
歯車をバネで押し付けることで、バックラッシュをなくす
技術です。トヨタのハイメカツインカムやスバルのEN07型エンジンなどがその代表例です。この方式は、一方向回転の機構に特に有効です。
フリクションギア: マツダがトランスミッションなどに採用している
技術です。主ギアよりも歯の数が少ない薄いギアを、皿バネのようにして主ギアに押し付けることで、摩擦力を利用してバックラッシュを小さくし、トルク変動も吸収します。回転方向を問わず、コスト面でも有利な点が挙げられます。
ローラドライブ:
三共製作所が開発した
技術で、ウオームホイールの歯を
ローラーに置き換え、
ローラーで歯を挟み込むことでバックラッシュを解消します。線接触となるため、伝達効率が高く、
産業用ロボットのアームなど、高精度な位置決めが求められる用途に適しています。
まとめ
バックラッシュは、機械の性能や
寿命に大きな影響を与える重要な要素です。その低減には様々な
技術が用いられており、機械の種類や用途、求められる精度に応じて最適な方法を選択する必要があります。今後も、より精密で効率的な機械を実現するために、バックラッシュ低減
技術の開発は続いていくでしょう。