バッドサンタ

『バッドサンタ』は、アルコール依存症で前科持ち、離婚歴もあるウィリー・ソークが主人公のブラックコメディ映画です。彼は毎年クリスマスシーズンになると、相棒のマーカスと共にショッピングモールに潜入し、サンタクロースに扮して金庫破りを働くという、型破りな生活を送っています。

ある年のクリスマスイブ、11万ドルを強奪したウィリーは引退を決意。酒を断ち、真面目に生きるためマイアミに移り住みます。しかし、彼はすぐに元の生活に戻ってしまい、借金まみれのどん底生活を送ることになります。

そんな中、マーカスから仕事を持ちかけられたウィリーは、アリゾナ州フェニックスのショッピングモール「チェンバレンズ」へと向かいます。そこで再びサンタクロースとして働き始めるウィリーですが、もちろん目的は金庫破りです。彼はマーカスと共に、モールの金庫やセキュリティシステムを調べ始めます。

しかし、彼らの計画は、いじめられっ子の少年サーマンと出会ったことで狂い始めます。サーマンはウィリーを本物のサンタクロースだと信じ込み、彼に執着するようになります。ウィリーは、最初はサーマンを嫌がりますが、次第に彼に心を開いていくようになります。

一方、モールでは、ウィリーとマーカスの行動を怪しむマネージャーや警備主任が、彼らの正体を追っています。ウィリーとマーカスは、様々な困難を乗り越えながら、クリスマスイブに大金を盗み出そうとします。

この映画は、コメディでありながらも、ウィリーの人間ドラマや、クリスマスというテーマを通して、社会や人間関係について考えさせる要素も持ち合わせています。ウィリーは、一見すると悪人ですが、彼自身の悲しみや孤独、そして心の奥底にある優しさなども描かれ、観客に複雑な感情を抱かせます。

キャストには、ビリー・ボブ・ソーントン、トニー・コックス、ブレット・ケリーなどが出演し、個性豊かなキャラクターたちが物語を盛り上げます。特に、ビリー・ボブ・ソーントンによるウィリーの演技は高く評価され、ゴールデングローブ賞やサテライト賞にもノミネートされました。

監督はテリー・ツワイゴフ、製作総指揮はコーエン兄弟が務めています。2016年には続編『バッドサンタ2』も公開され、更なる人気を博しました。

この映画は、クリスマスシーズンのショッピングモールの様子や、アメリカ社会の様々な側面も描かれています。サンタクロースという象徴的な存在を題材にしながらも、社会の闇や人間の弱さ、そして希望といった複雑な要素が織り交ぜられた、独特の世界観を持つ作品と言えるでしょう。

また、映画にはいくつかの興味深い小ネタが隠されています。例えば、ラストシーンでサーマンが着ていたTシャツは、別の映画にも登場するなど、細部まで作り込まれた演出が見られます。

さらに、この映画には、撮影中に亡くなったジョン・リッターへの追悼のメッセージがラストクレジットに記されていることなど、制作の裏側にもドラマがあります。

『バッドサンタ』は、ブラックユーモアと人間ドラマが絶妙に融合した、クリスマスシーズンにふさわしい、そして、それ以上に深い余韻を残す名作と言えるでしょう。 一度鑑賞すれば、その独特の雰囲気と、ウィリーのキャラクターに魅了されること間違いありません。

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