バトゥールィン

バトゥールィン：コサック国家の古都の歴史と悲劇

バトゥールィンは、ウクライナのチェルニーヒウ州に位置する都市で、セイム川の岸辺にあります。その歴史は、1625年にポーランド・リトアニア共和国の国王ステファン・バートリを記念して建設されたことに始まります。当初は要塞都市として機能し、フメリニツキーの乱を経てコサック国家の一部となりました。

コサック国家の首都としての繁栄と悲劇

17世紀後半から18世紀初頭にかけて、バトゥールィンはコサック国家の首都として重要な役割を果たしました。特に、イヴァン・マゼーパの時代には、約2万人の住民が暮らす繁栄した都市となり、多くの聖堂や修道院、国立学校が建てられました。しかし、マゼーパがスウェーデンと結びロシアに反旗を翻したことで、バトゥールィンは悲劇に見舞われます。

1708年、ロシア軍による包囲を受け、激しい攻防の末にバトゥールィンは陥落。ロシア軍は住民を虐殺し、都市は徹底的に破壊されました。この出来事は「バトゥールィンの悲劇」として歴史に刻まれ、その後のコサック国家の衰退を象徴するものとなりました。

ロシア帝国の支配と衰退

大北方戦争後、コサック国家の自治権は縮小され、バトゥールィンは首都としての地位を失いました。18世紀後半には、新たな頭領クィルィーロ・ロスモーヴシクィイが首都の再建と国家の近代化を目指しましたが、ロシアのエカテリーナ2世によって阻まれ、コサック国家は滅亡。バトゥールィンはロシア帝国に編入され、衰退の一途をたどりました。

ソ連時代と独立後の復興

ソ連時代には、バトゥールィンの多くの文化財が破壊されました。しかし、1991年のウクライナ独立後、バトゥールィンの歴史的価値が見直され、大規模な復元作業が開始されました。2009年には国立公園「ヘーチマンの都」が開設され、ロスモーヴシクィイ宮殿やバトゥールィン要塞などの文化財が修復・公開されています。

バトゥールィンの現在

現在、バトゥールィンは歴史的な観光地として、多くの人々にその魅力を伝えています。コサック国家の栄光と悲劇を伝えるこの都市は、ウクライナの歴史と文化を理解する上で重要な場所となっています。

主な観光スポット

ロスモーヴシクィイ宮殿: 最後のヘーチマン、クィルィーロ・ロスモーヴシクィイの居城。古典主義様式の美しい建築。
コチュベーイ大軍裁判官の屋敷: 18世紀末に建てられた歴史的な建物。
バトゥールィン要塞: 2009年に復元された要塞。コサック時代の面影を偲ぶことができる。
生神女庇護大聖堂: 1789年に建立された聖堂。
* 復活教会: 1803年建立。2009年に復元された。

バトゥールィンは、その波乱に満ちた歴史を通じて、ウクライナのアイデンティティを象徴する都市として、これからも人々の記憶に残り続けるでしょう。

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