バラム (旧約聖書)

バラム：旧約聖書の預言者

バラムは、旧約聖書の『民数記』に登場する、ユーフラテス川流域の町ペトルに住んでいたとされる預言者です。彼はしばしばエドム人の王バラクと混同されがちですが、別人です。バラムは、神の言葉を伝える力を持つ一方で、自身の利益や欲望に翻弄される複雑な人物として描かれています。

旧約聖書におけるバラムの出自

旧約聖書によると、バラムはベオルの子とされ、「ユーフラテス川流域にあるアマウ人の地の町ペトル」、「アラム・ナハライム（メソポタミアを指す）のペトル」、「アラム」、「東の山々」など、さまざまな場所が出身地として記されています。

モアブ王バラクとの出会い

イスラエル人がエジプトから脱出し、モアブの平野に宿営したとき、モアブの王バラクは、イスラエル人がアモリ人を倒したこと、またその数の多さを恐れていました。バラクは、占い師として名高いバラムにイスラエルを呪わせるため、使者を送りました。

使者たちは、お礼の穀物を持ってバラムのもとを訪れ、王の言葉を伝えました。当初、バラムは神の意思を確かめるために使者を滞在させましたが、神はイスラエルを呪うことを禁じました。バラクはさらに高位の使者を送り、金銀を積んででもバラムにイスラエルを呪うことを懇願しましたが、バラムは神の言葉には逆らえないと拒否しました。しかし、バラムは再度神に伺いを立て、バラクのもとへ行く許可を得ました。ただし、神がバラムに語ることのみを行うという条件付きでした。

バラムとロバの奇妙な旅

翌朝、バラムはロバに乗ってバラクのもとへ向かいましたが、神は怒り、天使を遣わしてバラムを止めようとしました。ロバは天使を見て道から外れようとし、バラムはロバを何度も打ちました。不思議なことにロバは言葉を発し、バラムの行為を非難しました。神がバラムの目を開くと、彼も天使の姿を見ることができました。天使はバラムに、神が告げたこと以外は語ってはならないと改めて告げ、バラクの元へ行くことを許可しました。

バラク王との対峙

バラク王は国境の町でバラムを出迎え、イスラエルの宿営が見える山へ案内しました。バラムはバラクに七つの祭壇と雄牛と雄羊を用意させ、祭壇ごとに捧げ物をしました。バラムは神意を問いましたが、その託宣は、バラクの意図とは異なり、イスラエルを呪うどころか祝福する内容でした。バラクはバラムを別の場所に連れて行き、再び託宣を求めましたが、結果は変わりませんでした。バラクは怒り、バラムに祝福も呪いも止めるように要求しましたが、バラムは神の言葉に従う以外ないと拒否しました。バラムは最後に、イスラエル人がモアブ人に何をするかを告げ、その場を去りました。

バラムの最期と教訓

バラムは、モアブの娘たちとイスラエルの民が淫らな行為に及んだ事件に関与しており、その結果、イスラエルに疫病が蔓延する原因を作ったとされています。後に、イスラエル人はミディアン人を攻め、その戦いでバラムは命を落としました。モーセによれば、バラムはミディアン人を通してイスラエル人を惑わせた張本人でした。

新約聖書では、バラムは悪徳を行った人物として名が挙げられ、その教えは「バラムの教え」と呼ばれ、偶像崇拝と不品行を誘発する教えとして非難されています。

バラム碑文

1967年にテル・デイル・アッラーで発見された碑文には、ベオルの子バラムが幻視した神々の言葉が記されており、滅びの予言が書かれているとされています。この碑文は、バラムが単なる伝説上の人物ではなく、実際に存在した可能性を示唆する貴重な資料となっています。

バラムの物語は、神の意思と人間の自由意志、また、預言者の役割と責任について、深く考えさせる内容を含んでいます。

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