バリューエンジニアリング

バリューエンジニアリング（VE）とは

バリューエンジニアリング（Value Engineering、以下VE）とは、製品やサービスが持つ価値を最大限に高めるための体系的な手法です。日本語では価値工学とも呼ばれ、英語の頭文字をとってVEと略されることも多くあります。

VEは、単にコストを下げるだけでなく、製品やサービスの機能、性能、顧客満足度といった価値を、製造や提供にかかるコストとのバランスで最適化することを目的としています。

VEの基本的な考え方

VEの根幹にあるのは、提供する製品やサービスが「誰のためのものか」「何のためのものか」という機能の本質を明確にすることです。そして、その機能とコストの関係を次の式で表し、価値の向上を目指します。


価値（Value） = 機能（Function） / コスト（Cost）


この式は、VEにおける価値とは、機能がもたらす満足度とコストの妥当性を示すものであることを示しています。つまり、VEでは、単にコストを下げるだけでなく、機能がもたらす価値とコストのバランスを最適化することが重要となります。

VE活動の特徴

VE活動では、異なる専門分野の知識や視点を取り入れるために、組織横断的なチームを編成します。これにより、多角的な分析が可能になり、新たな視点から価値を改善するアイデアが生まれやすくなります。

VEの定義

VEは、「最小のライフサイクルコストで、必要な機能を確実に達成するために、製品やサービスの機能的な研究に組織的に取り組む活動」と定義されます。

VEの基本原則

VEを成功させるためには、次の5つの基本原則を守ることが重要です。

1. 使用者優先の原則：製品やサービスを利用する人の視点を重視する
2. 機能本位の原則：製品やサービスの機能に着目し、その目的を追求する
3. 創造による変更の原則：既存のやり方にとらわれず、新たな発想で改善を試みる
4. チーム・デザインの原則：異なる専門分野のメンバーが集まり、協力して問題解決に取り組む
5. 価値向上の原則：常に価値を向上させることを目指す

VEの実施手順

VEは、以下のステップで実施します。

1. 機能定義
VE対象の情報収集：製品やサービスに関する情報を集める
機能の定義：製品やサービスの機能を明確にする
機能の整理：定義した機能を整理し、分類する
2. 機能評価
機能別コスト分析：各機能にかかるコストを分析する
機能の評価：各機能の重要度や価値を評価する
対象分野の選定：改善すべき分野を絞り込む
3. 代替案作成
アイデア発想：代替案となるアイデアを出す
概略評価：アイデアを大まかに評価する
具体化：有望なアイデアを具体的に検討する
詳細評価：具体的な代替案を詳細に評価する

VEの歴史

VEは、1947年にアメリカのGE社で開発されたバリューアナリシス（Value Analysis、VA）が起源です。開発者は技術者のローレンス・D・マイルズです。

マイルズは、第二次世界大戦後の資材不足の中で、アスベストの代替品を検討したことがきっかけとなり、この手法を考案しました。その後、1954年にアメリカ国防総省が「バリューエンジニアリング」と呼んで導入し、この名称が一般化しました。

日本では、1955年に日本生産性本部がアメリカからVEを導入し、製造業を中心に普及しました。

VEの適用範囲

VEは、さまざまな分野で活用されています。主な適用範囲は以下の通りです。

新製品開発（企画部門、設計部門）
量産後の製品改良（設計部門、製造部門）
QCサークル活動（製造部門）
業務改善（間接部門、非製造業）
行政における事業改善

価値向上の形態

VEでは、価値の向上は、機能とコストのバランスを変えることで実現できると考えます。

コストダウンによる価値向上：同じ機能でコストを下げる
例：材料費を削減する、製造工程を効率化する
機能UPによる価値向上：同じコストで機能を向上させる
例：製品の性能を向上させる、サービスの質を高める
機能UP＆コストダウンによる価値向上：機能向上とコスト削減の両方を実現する
機能UP＆コストUPによる価値向上：コストは上がるが、それ以上に優れた機能を提供する

VE関連の協会と専門資格

日本バリュー・エンジニアリング協会は、VEの専門家認定のために、VEL、VES、CVSの3段階の資格を認定しています。

VEL（VEリーダー）：VE活動のリーダーとして必要な基礎知識を持つ人材
VES（VEスペシャリスト）：企業や組織でVE活動を推進する人材
CVS（Certified Value Specialist）：VEに関する高い知識とスキルを持つ人材

まとめ

バリューエンジニアリングは、製品やサービスの価値を最大限に高めるための強力な手法です。機能とコストのバランスを常に意識し、組織全体で取り組むことで、より良い製品やサービスを提供できるようになります。

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