バリー・マクギガン

バリー・マクギガン：国境を越えて愛されたフェザー級王者

1960年2月28日、アイルランドのモナハン県クロニースに生まれたバリー・マクギガンは、父にアイルランドの著名な歌手パット・マクギガンを持つ家庭に育ちました。彼はリング上で、その卓越した技術と不屈の精神をもって、多くの人々の心を掴みました。特に、アイルランドとイギリスという二つの国境を越えて支持を集めた彼の存在は、当時の社会情勢においても特異なものでした。元WBA世界フェザー級王者として、彼のキャリアはボクシング史に確固たる足跡を残しています。

彼のボクシングキャリアは、まずアマチュアの舞台から始まりました。アイルランド代表として選ばれたマクギガンは、1980年に開催されたモスクワオリンピックのフェザー級に出場。世界の強豪が集う五輪の経験は、その後のプロ生活の貴重な糧となりました。

オリンピック後、マクギガンはプロ転向を決断します。1981年5月10日、故郷アイルランドの地でプロボクサーとしての第一歩を踏み出しました。プロのリングでもその才能はすぐに開花します。着実にキャリアを積み重ねること15戦目となる1983年4月12日には、イギリス国内のフェザー級王座を獲得し、その実力を国内に知らしめました。さらに同年11月16日には、19戦目にして欧州王座（EBUヨーロッパフェザー級王座）決定戦に臨み、バレリオ・ナチを相手に6ラウンドKO勝利を収め、ヨーロッパの頂点にも立ちました。この時点で、彼は世界王座への挑戦を視野に入れる存在となっていました。

そして、プロキャリア28戦目となる1985年6月8日、バリー・マクギガンはついに世界王座初挑戦の機会を得ます。相手は長らくWBA世界フェザー級のベルトを守り続けてきた伝説的王者、エウセビオ・ペドロサ。ペドロサは19度もの防衛に成功しており、その鉄壁の牙城を崩すことは至難の業と見られていました。しかし、マクギガンはホームであるロンドンの熱狂的な観衆の後押しを受け、15ラウンドに及ぶ激しい攻防の末、判定で見事に勝利を収めました。これにより、長年の王者が築いた時代に終止符を打ち、彼は新たなWBA世界フェザー級王者として君臨することとなったのです。この勝利は、彼をアイルランドとイギリス双方における国民的英雄へと押し上げました。

世界王者となったマクギガンは、その後2度の防衛に成功し、その実力を証明しました。しかし、3度目の防衛戦となった1986年6月23日、相手はスティーブ・クルスでした。ラスベガスの灼熱のリングで行われたこの試合は、両者一歩も譲らない壮絶な打撃戦となり、最後まで勝敗の行方が分からない接戦となりました。結果は15ラウンド判定負け。マクギガンは王座から陥落しましたが、この死闘は「リングマガジン ファイト・オブ・ザ・イヤー」、つまり年間最高試合に選ばれるほど、後世に語り継がれる名勝負となりました。

王座陥落後もキャリアを続けたマクギガンでしたが、1989年5月31日の試合を最後に、惜しまれつつ現役生活にピリオットを打ちました。プロキャリアを通じて築き上げた戦績と、リング上で見せた勇気あふれるファイトスタイルは、多くのファンに強い印象を残しています。

バリー・マクギガンがボクシング界に残した功績は、単に世界王座を獲得したという事実にとどまりません。彼は分断されたコミュニティの間で架け橋となり、多くの人々に希望と感動を与えました。そのカリスマ性と不屈の精神は、今なお多くのボクサーやファンにとってインスピレーションの源となっています。

獲得した主要タイトル

WBA世界フェザー級王座（防衛2度）
EBUヨーロッパフェザー級王座
* イギリスフェザー級王座

彼のプロキャリアの詳細については、BoxRecのデータベースで確認することができます。

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