バルサム

バルサム（balsam）

バルサムとは、特定の樹木から自然に分泌される、粘性の高い液体の総称です。この液体は、一般的に樹脂が揮発性の油脂に溶解した混合物として存在し、その最大の特徴は強い芳香を持っている点にあります。化学的にはオレオレジン（含油樹脂）とも呼ばれ、英語では「バルサム（balsam）」またはより古い形である「バルム（balm）」と呼ばれます。

語源

「バルサム」という言葉の起源は古く、特に聖書に登場する記述に由来するとされています。具体的には、古代ギレアド地方（現在のヨルダン周辺）に自生していたとされるアラビアバルサムノキから得られるバルサム、「バルム・オブ・ギレアド」がその語源と考えられています。この「バルム・オブ・ギレアド」は、聖書において傷の痛みを取り癒す力を持つ芳香性樹脂として描かれており、やがてこの言葉が持つ意味合いが広がり、特定のスパイスや香木、さらには様々な種類の芳香性樹脂全般を指す用語として用いられるようになりました。

特徴と性質

バルサムは、それを分泌する樹木の種類によって性質や香りが異なります。バルサムを分泌する樹木は、一般的に「バルサム樹」と呼ばれますが、これは特定の植物学上の分類群を指す名称ではなく、様々な科や属に属する樹木が含まれます。例えば、身近な例としては松から得られる松脂も、このバルサムの一種として位置づけられます。バルサムは常温では粘性の高い液体ですが、揮発性成分を含むため、独特の強い香りを放ちます。

用途

古くから芳香剤や香料、あるいは伝統的な治療薬として用いられてきました。歴史的には、その保存性や芳香性から、古代エジプトで行われたエンバーミング（遺体防腐処理）にも使用された記録があります。現代においても、香水や化粧品の成分、医薬品、塗料、接着剤など、様々な分野で利用されています。ただし、具体的な用途はバルサムの種類によって異なります。

種類

バルサムには多くの種類が存在し、それぞれが分泌される樹木の名称や主要な産地の名前を冠して区別されるのが一般的です。例えば、ペルーバルサム、トルバルサム、カナダバルサムなどが知られていますが、これらの具体的な種類とその特徴は、供給源となる樹種や産地によって多様性に富んでいます。

このように、バルサムは単一の物質ではなく、樹木から得られる芳香性のある粘性液体全般を指す広い概念であり、その歴史は古く、現代においても多岐にわたる分野で活用されています。

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