バンカー・パレス・ホテル

バンカー・パレス・ホテル

『バンカー・パレス・ホテル』（Bunker Palace Hôtel）は、1989年にフランスで製作されたSFファンタジー映画です。この作品は、フランスの著名な劇画家（バンド・デシネ作家）であるエンキ・ビラルが、自身の作品を原作として初めて映画監督に挑んだ記念碑的な作品です。公開時にはフランス国内で観客動員記録を塗り替えるほどの話題を呼びました。キャッチコピーは「近未来サイコウのおもてなし、バンカー・パレス・ホテルへ、ようこそ。」というもので、その独特な世界観を示唆しています。

物語

舞台は、絶え間なく降り注ぐ酸性雨と、政府軍と反乱軍による激しい抗争が続く荒廃した世紀末です。戦況が政府側にとって絶望的な状況へと傾きつつある中、政府の崩壊を予期した大統領は、主要な政府高官たちを秘密裏に招集します。彼らは荒れ果てた地表から地下深くの避難施設「バンカー・パレス・ホテル」へと身を移しますが、そこで彼らを待ち受けていたのは、ホテルの従業員として働くアンドロイドたちでした。彼らはアンドロイドたちの案内で、安全と思われた地下壕での晩餐を楽しむのですが、この閉鎖空間には反乱軍のスパイや、高官になりすました工作員がすでに潜入していました。

外部から隔絶された空間で、高官たちは互いの正体を疑い始め、疑心暗鬼から深刻な混乱へと陥っていきます。誰が敵なのか見分けがつかなくなり、緊張が高まる中、絶対的な安全が保障されているはずのバンカー・パレスの壁までもが崩落し始めます。追い詰められた高官たちの間では遂には殺戮が始まります。状況が悪化する中で、地上への脱出を図る者たちも現れますが、辛うじて地上へ辿り着いた者たちが目にしたのは、アンドロイドたちによって支配された世界であった、という衝撃的な結末を迎えます。

キャスト

この作品には、フランス映画界を代表する実力派俳優たちが多数出演しています。

オルム - ジャン＝ルイ・トランティニャン
クララ - キャロル・ブーケ
ミュリエル - マリア・シュナイダー
ソラル - ジャン＝ピエール・レオ
ニコライ - ブノワ・レジャン
オルシニ - ヤン・コレット
デトゥープ - フィリップ・モリエ＝ジュヌー
ザルカ - ロジェ・デュマ
大統領 - ハンス・メイヤー

スタッフ

監督 - エンキ・ビラル
助監督 - パトリック・ハルピン
製作 - モーリス・ベルナール
脚本 - エンキ・ビラル、ピエール・クリスティン
撮影 - フィリップ・ウェルト
美術 - ミッシェル・アベ＝ヴァニエ
衣裳デザイン - ニコラス・ハルレ
マット画 - ジャン＝マリー・バイブス
特殊効果 - パトリック・コランドル
録音 - ピエール・ガメ
音楽 - フィリップ・エデル、アルノー・ドゥボ
編集 - ティエリー・デロクル、チェリー・レルクル
字幕 - 松岡葉子

製作はフランスのプロダクション、AFC、FR3フィルム・プロダクション、テレマが共同で行いました。

受賞歴

本作は、その独特な世界観と優れた技術が高く評価され、1990年度のフランス・セザール・アワードにおいて、設定デザイン賞と音響賞にノミネートされました。

エンキ・ビラルのイマジネーション溢れる未来描写と、閉鎖空間での人間の心理を描いた本作は、SFファンタジーでありながらもサスペンスや人間ドラマの要素を強く持つ作品として記憶されています。

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