バンクロフト・デイヴィス

ジョン・チャンドラー・バンクロフト・デイヴィス

ジョン・チャンドラー・バンクロフト・デイヴィス（1822年12月22日 - 1907年12月27日）は、19世紀半ばから後半にかけてアメリカ合衆国で重要な役割を担った政治家であり、有能な外交官でした。彼は国務次官補、最高裁判所の判例編纂官、そして駐ドイツ公使といった要職を歴任し、特に国際的な交渉の舞台でその手腕を発揮しました。

生い立ちと教育

デイヴィスは、1822年12月22日にマサチューセッツ州ウースターに生を受けました。彼の父、ジョン・デイヴィスはホイッグ党の有力な政治家であり、マサチューセッツ州知事を務めた人物です。このような政治的な家系に生まれたデイヴィスは、幼少期から恵まれた環境で育ちました。彼は高等教育を受け、1847年には名門ハーバード大学を卒業し、文学士の学位を取得しました。

キャリア初期

大学卒業後、デイヴィスは外交の世界に足を踏み入れます。1849年には、イギリスのロンドンにあるアメリカ合衆国大使館に書記官として赴任し、その後は代理公使の任も務めました。ロンドンでの経験は、彼の外交官としての基礎を築く上で貴重なものとなりました。帰国後、彼はニューヨークで弁護士として開業し、法律の専門知識を深めました。同時に、ロンドンの有力紙であるタイムズのニューヨーク特派員としても活動し、ジャーナリストとしての側面も持っていました。しかし、1862年には健康上の問題を抱えたため、弁護士業から身を引くことになります。

政治・外交の舞台へ

法律業を離れた後も、デイヴィスは公的な活動を続けました。1868年にはニューヨーク州下院議員として州政に携わりました。そして、彼は再び外交の最前線に戻ります。ユリシーズ・グラント大統領の政権下において、彼は二度にわたり国務次官補を務めました。最初の任期は1869年から1871年まで、二度目は1873年から1874年までです。国務次官補は国務長官を補佐し、外交政策の立案や実務執行において中心的な役割を果たす重要なポストであり、デイヴィスはそこでその能力を遺憾なく発揮しました。

国務次官補を務める傍ら、彼は国際会議においてもアメリカ合衆国の代表を務めました。1871年から1873年にかけては、スイスのジュネーヴにおいて合衆国の高等弁務官として重要な任務にあたっています。さらに、1874年には駐ドイツ公使に任命され、1877年までの3年間、ドイツとの外交関係強化に貢献しました。

ワシントン条約への貢献

デイヴィスのキャリアにおいて特筆すべきは、英米間の懸案事項であった紛争の解決に向けた交渉における彼の役割です。南北戦争中にイギリスが南部連合に便宜を図ったとされる「アラバマ要求」をはじめ、両国間には様々な未解決の問題が存在していました。グラント大統領はこれらの問題を平和的に解決するため、交渉委員会を設置し、デイヴィスはその一員に指名されました。彼はこの重要な委員会において中心的な役割を担い、困難な交渉をまとめ上げるために尽力しました。彼の貢献もあり、1871年に画期的なワシントン条約が締結されました。この条約により、アラバマ要求を含む多くの英米間紛争が仲裁や話し合いによって解決への道が開かれ、両国関係の改善に大きく寄与しました。デイヴィスの外交手腕と交渉力が結実した瞬間でした。

最高裁判所での職務と晩年

外交官としての輝かしい実績を持つデイヴィスですが、彼の公的なキャリアはそれだけにとどまりませんでした。1881年から1882年にも再び国務次官補として奉職した後、1883年にはアメリカ合衆国最高裁判所の判例編纂官という全く異なる、しかし極めて重要な職務に就任しました。判例編纂官は最高裁判所の判例を公式に編集・出版する責任を負う役職です。デイヴィスは、この判例編纂官の職を1902年まで、およそ20年近くもの長きにわたり務め上げました。これは彼のキャリアの中で最も長い期間を占める職務であり、アメリカ法体系の整備に不可欠な貢献を果たしました。

公職から退いた後、ジョン・チャンドラー・バンクロフト・デイヴィスは1907年12月27日、ワシントンD.C.にて85歳でその生涯を閉じました。政治家、外交官、そして法曹界の記録者として、多岐にわたる分野でアメリカ合衆国に貢献した人物として、彼の名前は記憶されています。

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