バンコック・レコーダー

「バンコック・レコーダー」（タイ語: บางกอกรีคอร์เดอร์、またはหนังสือจดหมายเหตุ、英語: Bangkok Recorder）は、19世紀にタイ王国で発行されていたタイ語新聞です。この新聞は、アメリカ人宣教師ダン・ビーチ・ブラッドレイ博士（Dr. Dan Beach Bradley）によって1844年にバンコクで創刊されました。ブラッドレイ博士は、タイに35年間滞在し、キリスト教の宣教活動を行う傍ら、この新聞の発行にも尽力しました。

バンコック・レコーダーは、1844年から1845年、そして1864年から1867年の期間に発行されました。当初は月刊でしたが、後に隔週刊へと移行しました。タイ語版と英語版の両方が発行され、タイ語版は6インチ×9インチ、英語版は12インチ×18インチの紙面で、それぞれ2段組で構成されていました。

創刊当初から、バンコック・レコーダーはタイ社会に大きな影響を与えました。読者層は、ラーマ3世を含むタイの貴族たちにまで広がりました。記事の内容は多岐にわたり、地域ニュース、海外ニュースだけでなく、科学や政治に関する記事も掲載されました。これにより、読者は国内外の様々な情報を知ることができました。

しかし、ブラッドレイ博士はキリスト教宣教師であったため、記事にはキリスト教の視点から偏った内容が含まれることもありました。特に、仏教に関する記事は、博士のキリスト教的な立場から批判的に書かれることがあり、この点が指摘されています。

バンコック・レコーダーが廃刊に至った背景には、読者からの支払い不足があったとされています。ブラッドレイ博士は紙面で読者に対して料金を支払うよう呼びかけましたが、十分に支払われなかったため、新聞の経営が立ち行かなくなり、1867年に廃刊となりました。

バンコック・レコーダーは、タイにおける初期の新聞の一つとして、その歴史的な意義は非常に大きいと言えます。タイ社会に西洋のニュースや知識を伝え、社会変革の一翼を担いました。また、宣教師による出版活動が、タイのメディア史に与えた影響を示す重要な事例でもあります。この新聞は、タイの近代史を研究する上で欠かせない資料となっています。

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