バーク堆肥

バーク堆肥：樹皮から生まれた土壌改良資材

バーク堆肥とは、樹皮を主な原料として発酵・腐熟させた有機質肥料です。土壌改良を目的として広く利用されており、特に土壌の物理性を改善する効果に優れています。一般的なバークチップとは異なり、発酵処理によって有機物として安定した状態になっています。

原料と品質

バーク堆肥の原料となる樹皮には、広葉樹、針葉樹の区別はなく、様々な樹種が使用されます。混合比率についても特に規定はありません。しかし、原料樹皮の種類によって堆肥の品質が大きく左右されます。針葉樹の樹皮には、植物の生育を阻害する物質が含まれる場合があり、生育不良や発芽抑制といった問題を引き起こす可能性があります。そのため、広葉樹の樹皮を原料としたバーク堆肥の方が、一般的に品質が高いとされています。

稲藁などの草類を原料とする堆肥と比較すると、バーク堆肥は炭素含有量（C）に対する窒素含有量（N）の比率（C/N比）が高く、肥料効果の現れがゆっくりとした遅効性肥料です。この性質は、土壌への養分供給を長期的に安定させるという利点がある一方で、窒素分の少ないバーク堆肥を大量に施用すると、植物が窒素不足に陥り、生育不良を起こす可能性があります。そのため、施用量のコントロールと、十分な熟成期間を経た堆肥を使用することが重要です。

歴史と用途

バーク堆肥の生産が始まったのは、1960年代後半です。パルプ工場や木材加工工場から排出される大量の樹皮の有効活用策として開発され、当初は農業分野での利用が中心でした。しかし、その土壌改良効果の高さと環境への配慮から、公共事業における緑化や、園芸分野へと用途が拡大し、現在では幅広い分野で利用されています。

法的定義

バーク堆肥は、日本の法律において「肥料の品質の確保等に関する法律」で定められた特殊肥料に分類されます。同法の区分「ロ」に該当し、「わら、もみがら、樹皮、動物の排せつ物その他の動植物質の有機質物（汚泥及び魚介類の臓器を除く）を堆積または撹拌し、腐熟させたもの」として定義されています。「地力増進法」では土壌改良資材として位置づけられています。

製造工程

バーク堆肥の製造工程は、概ね以下の通りです。

1. 原料の調達: 木材チップ工場や製材工場から排出される樹皮を原料として調達します。
2. 粉砕: 粉砕機を用いて、樹皮を細かく粉砕します。
3. 粒度調整: 回転ふるいなどで、目的とする粒径に調整します。
4. 混合: 油かす、家畜糞尿（鶏糞や豚糞など）、化学肥料（尿素など）といった添加物を混合します。これらの添加物は、発酵を促進したり、窒素分を補給したりする役割を果たします。
5. 含水量調整: 発酵を最適な状態で行うために、堆肥の含水量を調整します。
6. 発酵・腐熟: 堆積して発熱させることで、高温発酵・腐熟を行い、有機物を安定化させます。この工程で、病原菌や雑草の種子が死滅します。

品質基準

バーク堆肥の品質は、全国バーク堆肥工業会などの団体が定める基準によって管理されています。これらの基準では、成分組成、粒径、水分含量、pHなど、様々な項目が規定されています。

まとめ

バーク堆肥は、環境に配慮した持続可能な農業や緑化に貢献する、有用な土壌改良資材です。その効果を最大限に発揮するためには、原料の選定、製造工程、施用方法などについて、十分な知識と注意が必要です。特に、C/N比の高さからくる窒素欠乏のリスクを理解し、適切な管理を行うことが重要です。

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