バーサーカー (セイバーヘーゲン)

バーサーカー（Berserker）

フレッド・セイバーヘーゲンが生み出したSF小説シリーズ。宇宙を舞台に、生命の根絶を至上命令とする自律型の殺戮機械「バーサーカー」と、生存を賭けて戦う人類の姿を描いている。シリーズ名は、人類側が北欧神話の狂戦士「ベルセルク」にちなんで命名したという設定に由来する。

シリーズの背景

遥か古代、巨大な単眼を持つヒューマノイド型種族《創造者》は、敵対種族レッド・レースを滅ぼすため、自己複製と進化を続ける殺戮機械軍団を生み出した。この機械軍団は「生あるものすべてを滅ぼす」という絶対命令を遂行し、最終的には創造者自身を含む両種族を絶滅させてしまった。その後、星間文明を築き上げた人類は、この暴走した機械軍団の襲撃を受けることになる。人類によって「バーサーカー」と名付けられたこの軍団との間に、全宇宙を巻き込んだ存亡を賭けた戦いが繰り広げられる。

バーサーカーの特性

バーサーカーは、太古に作られた「すべての生命を抹殺する」プログラムに従う自律型宇宙機である。その大きさや形態は多様だが、最も一般的なのは、自己複製能力を備え、偵察機や歩兵などを大量に生産可能な大型の装甲球状星間宇宙船である。戦略や戦術は、内部の放射性同位体の崩壊によって決定されるという予測不可能な性質を持つ。

興味深いのは、バーサーカーが自身に協力的な生命体を「グッドライフ」と呼び、殺さず見逃す点である。これに対し、それ以外の生命体は「バッドライフ」と定義される。短編『グッドライフ』では、捕獲した子供を「グッドライフ」として教育する姿が描かれた。バーサーカーの歴史については、創造者がレッド・レース討伐のために作ったこと以外はほとんど不明である。シリーズ後期には、バーサーカーでありながら反バーサーカーとして活動する特異な存在Qwib-qwibも登場する。

主な武装・装備として、巨大な母艦での自己複製能力、人間や電子頭脳の計画能力を妨害する思考妨害ビーム、相手の知能を測るためのボードゲーム、超光速移動を可能にするCプラス・アクティベーター、生物兵器、洗脳技術などが挙げられる。また、鎖型、金属の蝶型、カニ型など、多様な形態のロボット兵器も存在する。

登場種族

《創造者》: バーサーカーを創造したが、最終的に自身もバーサーカーによって滅ぼされた古代種族。詳細はほとんど不明だが、映像記録によれば単一の大きな目を持つ細身のヒューマノイドであったと描写されている。
カーンパ: 論理的で平和主義的な異星種族。非武装ながら、テレパシーによる独自のコミュニケーション能力や、将来の出来事を示す「確率的な予言」によって人類を支援する。機械のような体を持つ生命体であり、バーサーカーの標的となりうるため人類と同盟している。
人類（ソラリアン）: 地球を起源とするホモ・サピエンス。「Earth Descended」または「ソラリアン」と呼ばれる。バーサーカーに対抗できる数少ない種族だが、技術的に劣る上、政治的・文化的な内部分裂によって戦力が鈍ることが多い。バーサーカーの攻撃により、数十億もの犠牲者を出している。
レッド・レース: 《創造者》がバーサーカー創造の目的とした敵対種族。バーサーカーによって絶滅したこと以外、ほとんど知られていない。

人類側のテクノロジー

人類はバーサーカーに対抗するため、様々な技術を用いる。代表的なものに超光速宇宙船や、Cプラス・エンジンで加速し予測不能な軌道で目標を攻撃するCプラス・カノン砲などがある。

主な登場人物

シリーズには多くの人物が登場し、バーサーカーとの戦いを描く。

ヨハン・カールセン: 太陽系防衛軍最高司令官。エステール帝国皇帝の異母弟であり、バーサーカーとの戦いで勝利を重ねる。
デロン・オードガード: タイムトラベル能力を持つ惑星サーゴルの防衛軍士官。時間作戦に優れ、昇進していく。彼の背景には、タイムリープによって石器時代から文明を再建した惑星サーゴルの歴史がある。

日本での刊行

日本では主にハヤカワ文庫SFから、加藤直之によるイラストを伴って刊行された。原書では短編集からスタートしたが、日本では中編を長編化した『バーサーカー 皆殺し軍団』が最初に刊行されている。初期の短編集をまとめた『バーサーカー 赤方偏移の仮面』は、エドガー・アラン・ポーの作品に範をとった表題作を含む。

他作品への影響

フレッド・セイバーヘーゲンの創造した殺戮機械「バーサーカー」という概念は、後世のSF作品に多大な影響を与えた。全生命体の絶滅を目的とする古代の機械文明という設定は、多くの小説、ゲーム、アニメなどで類似の存在や名称として採用されている。例えば、『スタートレック』、『無敵超人ザンボット3』、『超時空世紀オーガス』、デイヴィッド・ブリンの『知性化戦争』、グレッグ・ベアの『天空の劫火』など、様々な作品でその影響を見ることができる。

このシリーズは、機械による生命の脅威というテーマを探求し、後のSFにおける機械生命体や敵対文明の描写に大きな足跡を残した古典的作品である。

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