バーゼルIII

バーゼルIIIとは

バーゼルIII（バーゼルスリー）は、国際的な銀行規制の枠組みであり、銀行の健全性と金融システムの安定性を強化することを目的としています。2007年から2008年にかけて発生した世界的な金融危機を教訓に、既存の規制の欠陥を補い、より強固な金融システムを構築するために導入されました。

概要

バーゼルIIIは、自己資本規制の強化、流動性リスク管理の導入、レバレッジ比率の規制という3つの主要な柱で構成されています。これらの規制を通じて、銀行の財務基盤を強化し、金融危機時の損失吸収能力を高め、取り付け騒ぎのリスクを軽減することを目指しています。

主な方針

自己資本の質の向上と比率の引き上げ:
普通株式等Tier1（CET1）比率、Tier1比率、総自己資本比率といった自己資本比率の最低水準を引き上げ、資本の質を向上させることで、銀行の損失吸収能力を強化します。
資本保全バッファーとカウンターシクリカルバッファーを導入し、景気変動に対する銀行の耐性を高めます。
流動性リスク管理の強化:
流動性カバレッジ比率（LCR）と安定調達比率（NSFR）を導入し、短期および長期の流動性リスクを管理することで、銀行の資金繰りの安定性を確保します。
レバレッジ比率の導入:
リスクアセットに対する自己資本比率に加えて、総資産に対する自己資本比率であるレバレッジ比率を導入することで、銀行の過度なレバレッジを抑制します。

各国・地域での導入状況

バーゼルIIIは、国際的な合意に基づいて策定されましたが、各国・地域における具体的な導入状況は異なります。

日本:
金融庁は、バーゼルIIIに準拠した自己資本比率規制の改正案を公表し、段階的な経過措置を設けて導入しました。
国際統一基準行に対して、レバレッジ比率、流動性カバレッジ比率、安定調達比率の適用を開始しました。
米国:
連邦準備制度理事会（FRB）は、バーゼルIII規制を実質的にすべて施行に移し、500億ドルを超える資産を持つすべての金融機関に適用することを明らかにしました。
大手銀行持株会社に対して、30日間の純現金流出をカバーするのに十分なHQLA（質の高い流動資産）の保持を義務付けました。
欧州:
欧州連合（EU）では、CRR（銀行および投資会社に対する健全性規制）に関する指令2013/36/EU（CRD IV）および規則（EU）No. 575/2013を構成する新たな法案パッケージとして、バーゼルIII規制が施行されました。

バーゼルIIIの影響

バーゼルIIIの導入は、銀行の経営や金融市場に様々な影響を与えています。

銀行の自己資本比率の向上:
バーゼルIIIの導入により、銀行は自己資本比率を向上させる必要に迫られ、リスク資産の圧縮や自己資本の積み増しを行っています。
銀行の収益性の低下:
自己資本比率の向上や流動性規制の導入により、銀行の資金調達コストが増加し、収益性が低下する可能性があります。
金融市場への影響:
バーゼルIIIの導入により、銀行のリスクテイク行動が抑制され、金融市場の安定化に貢献する可能性があります。

バーゼルIIIへの批判

バーゼルIIIは、金融システムの安定化に貢献する一方で、いくつかの批判も存在します。

規制の複雑さ:
バーゼルIII規制は非常に複雑であり、銀行のコンプライアンスコストが増加する可能性があります。
経済成長への悪影響:
自己資本比率の向上や流動性規制の導入により、銀行の貸出態度が慎重になり、経済成長を阻害する可能性があります。
格付け機関への依存:
* 信用リスクの評価において、格付け機関への依存度が高く、格付けの信頼性に対する懸念があります。

まとめ

バーゼルIIIは、金融システムの安定化を目指した重要な改革であり、自己資本比率の強化、流動性リスク管理の導入、レバレッジ比率の規制を通じて、銀行の健全性を高めることを目的としています。しかし、その導入には様々な課題や批判も存在し、今後の金融市場や経済に与える影響を注意深く見守る必要があります。

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