バートラム・ホテルにて

『バートラム・ホテルにて』

『バートラム・ホテルにて』は、アガサ・クリスティの名探偵ミス・マープルが活躍する1965年発表の推理小説です。この作品は、ロンドンにあるバートラム・ホテルを舞台に、さまざまなキャラクターが織り成す事件を描いています。ミス・マープルは、かつて宿泊をしたこのホテルで、独自の観察力を活かして事件解決に挑みます。

あらすじ

物語は、ミス・マープルが甥のレイモンドの勧めで、2週間の休暇をバートラム・ホテルで過ごすところから始まります。彼女はこのホテルの改装後の美しさや、スタッフの優秀さに感心しつつ、ロビーで友人のセリーナ・ヘイジーと再会します。滞在客の中には、冒険家のベス・セジウィックとその美しい娘エルヴィラ・ブレイク、そして彼女の後見人であるデリク・ラスコムもいます。さらに、物忘れの著しい聖職者ペニファザーとも出会い、やがて彼が会議のためにルツェルンに出かける準備を進める様子も描かれます。

エルヴィラは21歳になり、父親からの相続権を待つ一方で、彼女の母親は自らの意思で娘との関係を断っています。この相続が関わることで、エルヴィラは不安を抱きつつ、自分の遺産を巡る状況に思いを巡らせます。彼女は友人のブリジットと共にアイルランド旅行の計画を立てることに。その日、ペニファザーは予定通りにルツェルンへ向かう予定でしたが、物忘れから空港にたどり着いたのは特定の日の翌日で、そこで自らの過ちに気が付きます。

彼がホテルに戻ると、侵入者に襲われ、意識を失うことに。数日後、記憶を失った状態で目覚めたペニファザーは、強盗事件の現場近くで知らない家庭に保護されていました。一方、キャンベル警部とデイビー主任警部は、彼の身に起こった出来事の裏にある謎を解明しようとしています。特にホテル内の不思議さが彼らの調査をより難解にさせる中、マープルは観察を続けていきます。

人物関係

作品は、多彩な登場人物の交流を通じて進展します。例えば、ベス・セジウィックは冒険家であり、過去の結婚が引き起こす家族間のトラブルも絡まります。エルヴィラの相続を巡って、彼女は許可を得ることと真実を求める葛藤を抱えています。物語は進むにつれて、これらのキャラクターたちの秘密に迫っていくのです。

事件の核心

物語は急展開を迎え、ミス・マープルが描くように、人々の心の中に潜む緊張感と恐れが顕在化します。最終的にエルヴィラが発見したゴーマンの死体、そしてそこから展開される事件は、彼女の母が暗躍していたことが原因として浮かび上がります。組織的な犯罪とホテルの管理側の関与も判明し、実際にはベス・セジウィックが様々な事件の背後で動いていた首謀者だったことが明らかになります。

映像化

本作は、1987年と2007年にミス・マープルとして映像化され、多様なアプローチで視聴者に届けられました。特に1987年のシリーズは原作に忠実であり、一方の2007年版は登場人物やストーリーに独自の解釈を加えた作品として評価されています。

ミス・マープルの推理力と人間描写が詰まった『バートラム・ホテルにて』は、クリスティ作品の中でも特にファンに愛され続けている作品です。

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