パインサイダー

パインサイダー

パインサイダーは、主に山形県内で製造されているローカルな炭酸飲料、いわゆる「地サイダー」の一種です。パイナップルの風味を思わせる甘さと、豊富な炭酸による強い刺激が特徴で、多くは鮮やかな黄色に着色されています。

歴史と普及

その製造が始まったのは、戦後経済成長期にあたる1955年（昭和30年）以降とされています。かつては、300mlから500ml程度の比較的小ぶりなガラス瓶で販売されるのが一般的でした。特筆すべきは、三ツ矢サイダーなどの既存の瓶を洗浄して再利用するケースが多く見られたことです。これは、当時の清涼飲料用ガラス瓶よりもリユース瓶の方が厚手で丈夫であり、炭酸を充填した際の圧力に耐えやすいという理由があったためと言われています。

夏の暑い時期には、家庭でケース単位で購入して常備される飲み物として、山形県内で広く親しまれていました。しかし、清涼飲料の容器がガラス瓶から缶やペットボトルへと主流が移り、また家庭でのケース買いの習慣が薄れていくにつれて、パインサイダーもかつてほど頻繁に見かけることは少なくなっていきました。

山形県は、総務省の家計調査（2009年～2011年平均）において、一世帯当たりの炭酸飲料支出額が全国で第3位となるなど、サイダー文化が根付いている地域です。パインサイダーは、そうした土地で育った人々にとって、幼少期や青春時代を思い起こさせる「懐かしの味」として記憶されています。

近年の展開

一時的に市場での露出が減少したパインサイダーですが、2000年代に入って新たな動きが見られました。

2004年（平成16年）5月には、三和缶詰株式会社と山形県酒類卸株式会社が共同で、「みるパインサイダー」を開発・販売しました。これは300mlのボトル缶入りで、山形テレビのイメージキャラクター「みるるん」がデザインされており、同年夏にはテレビコマーシャルも展開され、県内のコンビニエンスストアなどで広く販売されました。

翌2005年（平成17年）には、ダイドードリンコ株式会社が、過去に親しまれた飲料を復刻する「復刻堂」シリーズの一つとしてパインサイダーを全国で発売し、地域限定だった味が全国に紹介される機会となりました。

さらに2012年（平成24年）からは、山形食品株式会社が「山形パインサイダー」（250ml缶）として、再び県内を中心に販売を開始するなど、複数のメーカーによって現在も製造・販売が続けられています。

特徴と風味

複数のメーカーが製造しているため、一口にパインサイダーといっても、その風味や甘さ、炭酸の強さはメーカーやロットによって異なります。しかしながら、共通する特徴として、果汁は使用されていないものの、パイナップルを想起させるような独特の甘い香りと、舌にピリリと響く強めの炭酸感、そして黄色い液色が挙げられます。

主な製造元

山形食品株式会社
三和缶詰株式会社（みるパインサイダー）
山形共栄
志んこや（コロナパイン）
フジサイダー
荘内合同飲料
* 丸善飲料（かつて製造・販売、現在は行っていない）

パインサイダーは、時代の変化や容器の変遷を経ながらも、山形県の炭酸飲料文化の中で今も受け継がれ、地域の人々に愛され続ける地サイダーです。

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