パウリーネ・フォン・メッテルニヒ

パウリーネ・フォン・メッテルニヒ：華麗なる社交界の貴婦人、そして作曲家の庇護者

パウリーネ・フォン・メッテルニヒ＝ヴィンネブルク・ツー・バイルシュタイン侯爵夫人（1836年-1921年）は、19世紀後半のヨーロッパ社交界を彩った、際立った存在感を放つ女性でした。ウィーンとパリの社交界で、その美貌と洗練された魅力で多くの人々を虜にし、音楽家たちのパトロンとしても重要な役割を果たしました。

華麗なる出自と波乱に満ちた生涯

ハンガリーの貴族、シャーンドル伯爵家の出身であるパウリーネは、「悪魔の騎手」と呼ばれた名騎手である父と、オーストリア宰相クレメンス・フォン・メッテルニヒの娘である母を持つ、恵まれた環境で育ちました。幼少期をウィーンの祖父メッテルニヒ邸で過ごし、その後、母方の叔父であるリヒャルト・クレメンス・フォン・メッテルニヒ侯爵と結婚します。

夫は外交官として活躍し、パウリーネはドレスデン、パリ（1859-1870年）、そしてウィーンで大使夫人として社交生活を送ります。パリではフランス皇后ウジェニーと親交を深め、夫と共にナポレオン3世の宮廷でも重要な役割を果たしました。彼女は、イギリス人ファッションデザイナーのチャールズ・フレデリック・ワースをウジェニー皇后に紹介し、ワースの名声を確固たるものにするきっかけを作ったとも伝えられています。

音楽家たちの庇護者

パウリーネは、音楽家たちのパトロンとしても知られています。彼女は洗練された社交の場を主催し、ワーグナー、リスト、グノー、サン＝サーンスなど、多くの著名な作曲家や芸術家と親交を結びました。特に、パリではワーグナーを、ウィーンではスメタナを支援し、自身のサロンではワーグナーの『ニーベルングの指環』など、多くのオペラ作品の簡略版の上演も行い、自ら舞台監督や歌手も務めたと言われています。ヨーゼフ・シュトラウスは彼女に『パウリーネ』というポルカ・マズルカを献呈するほど、彼女の存在は音楽界に大きな影響を与えました。

時代の波と個人的な悲劇

パウリーネの生涯は華麗な一方で、幾多の困難にも直面しました。幼少期にはウィーンの1848年革命を経験し、普仏戦争時にはパリに残ってウジェニー皇后を支え、皇后のパリからの脱出を手助けしたと言われています。

私生活においても、パウリーネは幾つかの悲劇を経験します。長女ゾフィーはエッティンゲン＝エッティンゲン侯子と結婚しましたが、次女パスカリーネはアルコール中毒の夫に殺害されたと伝えられています。末娘クレメンティーネは幼少期の事故で顔に傷を負い、生涯独身を貫きました。

帝国の興亡を生き抜いた証人

1921年にウィーンで亡くなったパウリーネは、オーストリア＝ハンガリー帝国とフランス帝国の栄光と衰退を目の当たりにした、生きた証人でした。彼女の生涯は、激動の時代を生き抜いた、一人の女性の華麗さと強さを物語る、貴重な歴史の一ページと言えるでしょう。その華やかな社交生活の裏側には、時代の波に翻弄されながらも、自身の信念を貫き、人々を魅了し続けた強い意志が感じられます。彼女の生き様は、現代においても多くの人の心に深く響き渡るでしょう。

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