パウル・アルフォンス・フォン・メッテルニヒ＝ヴィンネブルク

パウル・フォン・メッテルニヒ＝ヴィンネブルク：貴族、レーサー、そして国際自動車連盟会長

1917年、ウィーンに生まれたパウル・アルフォンス・フォン・メッテルニヒ＝ヴィンネブルクは、ヨーロッパの歴史に名を刻んだ名家メッテルニヒ家の後裔でした。オーストリアの宰相として知られるクレメンス・フォン・メッテルニヒ侯爵の曾孫にあたる彼は、その血筋を受け継ぎ、華麗で波乱に満ちた生涯を送りました。

彼の名は、単なる貴族の称号としてではなく、国際自動車連盟会長としての功績からも広く知られています。しかし、その輝かしい経歴の裏には、激動の時代を生き抜いた一族の物語が隠されています。

13歳の若さで家督を継いだパウルは、スイスの名門校で教育を受けました。しかし、彼の青年時代は第二次世界大戦によって影を落とされます。ナチス・ドイツの支配下、ベルリンで反体制活動に関わった彼は、そこで運命の出会いを果たします。同じく反体制派だったロシア人亡命貴族の娘、タチアナと結婚したのです。

結婚後、彼はチェコスロバキアにあったケーニヒスヴァルト城で生活していましたが、1945年のベネシュ布告による資産没収により、ラインガウ地方にあるヨハンニスブルク城へと移り住むことになります。この出来事は、彼の生涯に大きな影響を与えた出来事の一つと言えるでしょう。

しかし、パウルは困難を乗り越え、モータースポーツの世界で成功を収めます。ラリー・モンテカルロやル・マン24時間レースなど、数々のレースに出場し、その卓越したドライビングテクニックで多くのファンを魅了しました。

彼のモータースポーツへの情熱は、単なる趣味に留まりませんでした。1960年にはドイツ自動車協会の会長に就任し、その後、1975年から1985年にかけては国際自動車連盟会長という重要なポストに就きました。この間、彼はモータースポーツの発展に大きく貢献したのです。

彼の功績は、モータースポーツ界において高く評価されています。聖ラザロ騎士団の騎士に叙任された他、1979年にはドイツ連邦共和国功労勲章大十字章を受賞しています。

パウル・フォン・メッテルニヒ＝ヴィンネブルクの生涯は、貴族としての誇りと、レーサーとしての情熱、そして国際的な舞台で活躍したリーダーとしての姿を余すことなく示しています。彼の物語は、激動の時代を生き抜いた一人の貴族のドラマであり、同時に、モータースポーツ界に多大な貢献をした人物の偉業を伝えるものです。彼は、1992年、ジュネーヴでこの世を去りましたが、その功績は人々の記憶に長く刻まれることでしょう。

ル・マン24時間レース戦績（詳細な成績は情報不足のため割愛）

参考文献

* Der Spiegel. Nr. 40, 1992

もう一度検索