パウロ・ピカソ

パウロ・ルイズ・ピカソの生涯

パウロ・ルイズ・ピカソは、1921年2月4日にパリに生まれた。彼は画家として名を馳せたパブロ・ピカソと、ロシア帝国出身のバレエダンサー、オルガ・コクローヴァの間に生まれた唯一の子供である。パウロは正式にはポール・ルイズ・ピカソと呼ばれ、父のフランス語名「パブロ」に由来する愛称の「パウロ」で親しまれた。

幼少期と家庭環境

パウロは、パブロとオルガが結婚した後、比較的充実した幼少期を過ごしていた。両親は当初は仲が良く、パブロの多くの作品にパウロがモデルとして登場していた。しかし、その平穏な家庭は、パブロが1927年にマリー＝テレーズ・ワルテルと不倫関係に入ったことで崩壊する。1935年、オルガはパウロを連れて家を出て、南フランスに移った。この際、オルガは法律上の離婚を望んでいたが、パブロが財産分割を拒否したため、離婚を果たすことはできなかった。

青年期と親子関係の悪化

パウロの青年期は、父との関係の悪化を物語る時期であった。父の運転手などをして生活を支えたが、報酬はわずかであり、母オルガを助けることもできなかった。父はパウロに対して公然と侮辱的な言葉を投げかけ、次第に親子の絆は深く傷つけられた。アルコールに逃げ込むようになり、生活は次第に不安定になり、父から逃れることができなかった。父の経済的支援を受ける一方で、彼のまわりでは高級車に熱中する姿が見られた。

私生活と結婚

パウロは1950年にエミリアン・ロッテと結婚し、1953年に離婚した。この結婚からは二人の子供が生まれた。息子のパブリート・ピカソと娘のマリーナ・ピカソである。特にマリーナは母が離婚した際、まだ生後5か月だった。1955年にはクリスティーヌ・ポープランと出会い、1962年に再び結婚した。彼らの間にはベルナール・ルイズ＝ピカソという一人の子供が生まれた。

晩年と悲劇の連鎖

パウロの父、パブロ・ピカソが1973年に亡くなると、彼は父の遺産を受け取り、生活は豊かになった。しかし、継母ジャクリーヌとの関係が緊張し、甥であるパブリートが自殺未遂を起こし、三ヶ月後には命を落としてしまった。これがパウロに与えた精神的打撃は計り知れない。

彼自身は肝臓癌に冒され、1975年6月5日に54歳で亡くなった。彼の遺体はモンパルナス墓地に埋葬されている。波乱に満ちた人生は、父の名に縛られながらも、彼自身の道を歩もうとした孤独な戦いの記録として残った。彼は父の芸術と家族、そして個人的な葛藤の渦中に生き、その人生は多くの人々にとって興味深い物語である。

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