パキスタンの核実験 (1998年)

パキスタン核実験：チャーガイI

1998年5月28日と30日、パキスタンはバローチスターン州チャーガイ地区のラースコー丘陵で地下核実験を実施しました。この実験は「チャーガイI」というコードネームで知られています。

核実験の背景

パキスタンの核開発は、1970年代から始まりました。パキスタン原子力委員会（PAEC）は、実験候補地としてチャーガイ地区の山を視察していました。アブドゥル・カディール・カーンによれば、パキスタンと中国の核開発協力は、ズルフィカール・アリー・ブットーと毛沢東の合意に端を発し、ムハンマド・ジア＝ウル＝ハクもこれを引き継ぎました。中国から核兵器の設計図、遠心分離機、ウランが提供されたとされています。

1998年5月、インドがシャクティ実験を5回実施したことを受け、パキスタンは対抗措置として核実験に踏み切りました。5月28日には5回の核実験が実施され、当時のナワーズ・シャリーフ首相は国営テレビを通じて実験の成功を発表しました。この実験の総出力は40キロトンとされています。さらに、5月30日にも追加の核実験が行われました。

疑惑：北朝鮮との関連性

5月30日の核実験で使用された核爆弾は、プルトニウム型であったとされています。しかし、パキスタンは自国の核兵器は全て高濃縮ウラン型であると公言していました。一方で、北朝鮮の核兵器はプルトニウム型です。

パキスタンは北朝鮮から弾道ミサイル「ノドン」を購入し、「ガウリ」という名前で配備しています。これらの事実から、軍事評論家の江畑謙介氏は、5月30日の核実験が北朝鮮の核爆弾の代理実験であった可能性を指摘しました。

さらに、2004年2月には『ニューヨーク・タイムズ』が、アメリカの偵察機がパキスタンの核実験時に大気中のサンプルを採取し、プルトニウムを検出したと報じました。これは、当時のパキスタンの核開発には存在しないと考えられていたもので、北朝鮮由来のプルトニウム型核爆弾が使用された疑いが浮上しました。

2012年5月には、NHKが英国王立防衛安全保障研究所研究員の秋元千明氏を招いて特集を組みました。この中で、米英の情報機関が、北朝鮮が1998年にパキスタンに代理核実験を依頼した可能性が高いと認識していると報じられました。

これらの報道と証拠は、パキスタンの核実験が単なる自国開発だけでなく、北朝鮮の核開発と密接な関係があった可能性を示唆しています。疑惑は依然として残っており、国際社会は更なる真相解明を求めています。

もう一度検索