パテントプール

パテントプールについての詳細

定義と概要

パテントプール（英: patent pool）とは、特定のテクノロジーに関連する特許を持つ企業が集まり、互いにその特許をライセンスし合うことで、特許の利用と実施を円滑にする仕組みです。このようなプールは、特許権の所有者とライセンシーの利便性を向上させるために構築されます。特許の利用が必要な企業は、個別に特許をライセンスする代わりに、パテントプールを通じて一括でライセンス契約を結ぶことができ、流通コストが効率化されます。この仕組みは、特許の複雑な関連性がある場合に特に有効で、特定の発明を実用化するためには、パテントプールが最善の選択肢であることがあります。

歴史

初めてのパテントプールの一つは1856年に設立されました。これは、当時の主要なミシンメーカーであったHowe、Groover & Baker、Singer、そしてWheeler & Wilsonの4社が共同で特許をプールしたものでした。この企業たちは特許侵害の訴訟で対立していたため、オールバニで話し合いを行い、法的な争いを避けるために特許を共有することを決定しました。このような歴史的な合意が、パテントプールの概念が広がるきっかけとなりました。

パテントプールの役割と利点

パテントプールは、特許に関連するリスクを完全には排除しませんが、リスクを軽減する役割を果たします。企業がパテントプールに参加することによって、他のメンバーと協力し合いながら特許侵害の訴訟に取り組む環境ができるため、弁護費用やリスクの分散が期待できます。しかし、プール内部の問題や特定の企業の行動によっては、グループ全体の利益に悪影響を及ぼす危険性もあります。

経済的側面

特許のライセンス料の設定においては、パテントプール内の特許だけでなく、外部の特許所有者から提示される価格にも影響を受けます。特定のプールが市場におけるライセンス料の相場を形成することで、アウトサイダーの特許所有者が不当な高額な使用料を請求しづらくなります。これにより、特許を使用する企業は適正な価格でライセンスを受けることが可能になります。

運営の課題

パテントプールの運営は通常、第三者組織に委託されますが、特許権者とライセンシー間の利害調整は非常に困難です。また、プールへの参加には必須特許を保有することが求められ、参加企業間での公平性や中立性を保つことが重要です。今日の技術分野では、特許権者の数が増えているため、かつてのような日本企業主導のモデルは通用しなくなっています。さらに、パテントプールを形成する際には独占禁止法などの競争法への配慮も必要です。

標準化との関係

技術の標準化とパテントプールは密接に関連しています。例えば、MPEG-2のような標準化後に特許が集まるケースでは、少数の企業が多くの特許を保有していることが多く、運営上の問題が生じにくいとされています。しかし、標準化を行う際に多数の特許所有者が関与する場合、パテントプールへの参加者が限定されることが多く、形成が難しくなる傾向があります。

パテントプールの実例

• - MPEG-2: MPEG LA, LLCはMPEG-2に関する特許を25社から集め、約1500社とライセンス契約を結んでいます。
• - RFID: 2005年にRFID技術の特許プールが設立され、その後運営が見直されました。
• - 無線LAN: 特定の8社がVia Licensingを委託してパテントプールを立ち上げましたが、成功しませんでした。
• - LTE: 2008年には、LTEに関連する特許のライセンス料設定に関する合意が7社からなされ、競争が始まりました。

このように、様々な技術分野でパテントプールが設立され、それぞれに特有の課題と成功例があります。技術の急速な進展に伴い、パテントプールの重要性は今後ますます高まると考えられます。

もう一度検索