パトリック・ブリュエル

パトリック・ブリュエル

フランスを代表するアーティスト、パトリック・ブリュエル（Patrick Bruel）は、シンガーソングライター、俳優、そしてポーカープレイヤーと、多岐にわたる分野でその才能を発揮しています。1959年5月14日に、当時フランス領であったアルジェリアに生を受けました。彼のキャリアは、1990年代にフランス国内で社会現象とも呼べる「ブリュエルマニア」を巻き起こすほどの、圧倒的な人気によって特徴づけられます。

幼少期に両親が離婚したパトリックは、地元のフランス語教師であった母オーギュスタの手によって育てられました。1962年にアルジェリアが独立を果たすと、母と共にフランス本土へと渡り、パリ郊外のアルジャントゥイユを経て、最終的にパリへと移り住みます。10代の頃はサッカー選手を志す一方で、音楽、特にエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックスといったロックギタリストたちに深く傾倒していました。

キャリアの転機は、大学在学中に訪れます。夏休みを利用して歌手兼ギタリストとして活動を始めた矢先、日刊紙「フランス＝ソワール」の広告をきっかけに、アレクサンドル・アルカディ監督の1979年の映画『Le Coup de sirocco』で俳優としての第一歩を踏み出しました。同年にはニューヨークへ渡り、約1年間を現地のバーやカフェで過ごし、刺激的な音楽シーンに触れます。帰国後、パリで影響力のあるキャスティングディレクター、マルゴ・カペリエに認められたことから、舞台や映画で俳優としての道を本格的に歩み始めました。

歌手としてのデビューは1981年でしたが、この最初のシングルは大きな成功にはつながりませんでした。しかし、1983年にリリースしたシングル「Marre de cette nana-là!」が瞬く間に大ヒットし、彼は多くの少女たちのアイドルとなります。これ以降、歌手と俳優の両分野で着実に実績を重ね、特に1990年代には前述の「ブリュエルマニア」を巻き起こすほどの絶大な人気を確立しました。この時期にはハリウッドにも進出し、シドニー・ポラック監督の『サブリナ』（1995年）や、ジェフ・ポラック監督の『ライラ/フレンチKISSをあなたと』（1999年）といった作品に出演しています。

活動の幅は広がり続け、2012年には映画『Le Prénom』で第38回セザール賞の主演男優賞にノミネートされるなど、俳優としても高い評価を受けています（受賞には至りませんでした）。また、芸能活動と並行して、ポーカープレイヤーとしても知られており、国際大会にも積極的に出場しています。2003年には、本名を「Patrick Maurice Benguigui」から「Patrick Bruel Benguigui」に変更しています。

私生活においては、2001年に作家・脚本家のアマンダ・ステールと出会い、2003年に長男オスカルが誕生、翌2004年に結婚しました。その後、2005年に次男レオンをもうけますが、2007年に離婚しています。

歌手として数々のヒット曲を生み出す一方、俳優として多様な役柄を演じ、さらにはポーカーの世界でも実力を発揮するなど、パトリック・ブリュエルはその多才さで長年にわたりフランスのエンターテイメント界を牽引し続けています。

主な出演作品

『アテンション・バンディッツ』(Attention bandits!, 1986)
『ラ・メゾン/惨劇の館』(La maison assassinée, 1988)
『百一夜』(Les cent et une nuits de Simon Cinéma, 1995)
『サブリナ』(Sabrina, 1995)
『ジャガー』(Le jaguar, 1996)
『告発者K』(K, 1997)
『ライラ/フレンチKISSをあなたと』(Lost & Found, 1999)
『美しい妹』(Les jolies choses, 2001)
『優しさのミルク』(Le lait de la tendresse humaine, 2001)
『ある秘密』(Un secret, 2007)
『Le Prénom』(2012)
『ソフィー・マルソーのSEX,LOVE&セラピー』(Tu veux... ou tu veux pas?, 2014)

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