パナール 178

パナール178：フランスが生んだ偵察装甲車の軌跡

パナール178は、1930年代にフランスのパナール社がフランス陸軍騎兵部隊向けに開発した4×4輪駆動の偵察用装甲車です。その優れた性能から、第二次世界大戦中にはドイツ軍にも使用され、戦後には改良型が第一次インドシナ戦争でも活躍しました。

開発の背景

1931年12月、フランス陸軍騎兵部隊は偵察用装甲車（AMD: Auto-Mitrailleuse de Découverte）の配備計画を開始しました。1932年12月には、車体重量約4トン、航続距離400km、最高速度70km/h、5～8mmの装甲、20mm主砲＋機関銃という要求仕様が決定されました。

1933年、ルノー、ベルリエ、ラティル、パナールが試作車を製作し、1934年初頭に陸軍による試験が行われました。パナールが製作したモデル178は、1926年に同社が開発したモデル165/175をベースに改良したもので、当時の装甲車としては速度、走行性能、装甲、武装のバランスが取れた車両でした。

車体は古典的なリベット構造でしたが、最大20mmの装甲厚を持ち、前後両方に操縦席を備えていました。4×4輪駆動の大径タイヤにより、優れた走行性能を発揮し、武装はピュトー工廠製のAPX-3砲塔に25mm戦車砲と7.5mm機関銃を搭載していました。

フランス軍での運用

パナール178は、他の試作車と比較して重量過大であったにもかかわらず、最も優れていると判断され、小改良を経て1934年後半にAMD 35として採用されました。1935年からパナール社への発注が開始されましたが、ストライキや部品調達の遅れにより、実際の製造は1937年となりました。1939年9月時点で219両が納品され、1940年5月のドイツ軍侵攻時には、約340両の標準型と約20～30両の無線機搭載通信型がフランス陸軍に配備されていました。

フランス降伏までに、砲塔のない状態のものを含め、総計553両のモデル178が生産されたと見られています。その後、残っていた部品から更に176台がドイツ軍向けに製造され、生産数は729両に達しました。

1940年には、ルノー製の大型砲塔に換装し、より強力な47mm戦車砲を搭載した戦車駆逐車型が計画されましたが、試作車1両のみで量産には至りませんでした。

ドイツ軍での運用

フランス軍との戦闘でパナール178の優秀性を認識したドイツ軍は、本車をPanzerspähwagen P.204 (f)として自軍に編入しました。1941年のバルバロッサ作戦時には、鹵獲車と新造車合わせて約190両がドイツ軍に配備されていました。一部はドイツ軍仕様の無線機と大型フレームアンテナを搭載した無線通信車両に改造され、また一部は鉄道線路用の車輪に換装され、鉄道警備任務に使用されました。

ヴィシー政権も64両を国内警備任務に使用していましたが、1942年11月にフランス南部がドイツ軍に占領された際に接収されました。一部は元の砲塔を取り外され、5cm砲を搭載する自走砲に改造されました。

戦後の再生産と第一次インドシナ戦争

1944年9月にパリが解放された後、パナール社はモデル178の生産再開を決定しました。このモデルはパナール178Bと呼ばれ、新型のFL1砲塔に換装され、エンジンや無線機も新型のものに変更されました。主砲は当初75mm砲を搭載予定でしたが、最終的に47mm戦車砲に変更されました。1945年7月以降、計414両の178Bが生産され、フランス本国の他、シリア、タヒチ、マダガスカル、ベトナムなどフランス植民地各国で使用され、第一次インドシナ戦争にも投入されました。

退役とその後

1960年頃になると、フランス陸軍の178Bは後継車種であるパナールEBRやパナールAMLに更新されましたが、シリアでは1964年時点でも使用されていました。

登場作品

パナール178は、以下のゲーム作品に登場します。

War Thunder: フランスの初期車両として登場。
World of Tanks: フランスTier6軽戦車として登場。
* トータル・タンク・シミュレーター: フランスの装甲車として登場。

パナール178は、その優れた設計と性能により、第二次世界大戦から戦後の紛争まで、様々な戦場で活躍したフランスを代表する装輪装甲車です。

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