パビリオン山椒魚

パビリオン山椒魚

2006年に公開された日本映画、『パビリオン山椒魚』は、冨永昌敬が監督・脚本を務めた異色のミステリードラマです。動物国宝のオオサンショウウオを巡る真偽鑑定と、それに付随して発生する財団内部の騒動、そして主人公たちの織りなす切ない恋愛模様が、独特の映像美と叙情的な音楽に乗せて描かれます。

物語の概要

物語の中心人物は、レントゲン技師の飛島芳一（オダギリジョー）。彼はある人物から、動物国宝に指定されているオオサンショウウオ『キンジロー』の真偽を見極めるという特殊な依頼を受けることになります。その依頼主は、財団法人サラマンドル・キンジロー財団の買収を目論む第二農響会長の香川守弘（光石研）でした。

一方、キンジロー財団は内紛状態にありました。財団の元当主である二宮四郎（高田純次）は多額の借金を抱えており、その返済のため、長女で元女優の二宮アキノ（麻生祐未）が香川との結婚を決意。これが香川による財団買収へと繋がろうとしていたのです。

そんな中、四郎は自身の娘である高校生のあづき（香椎由宇）を密かに呼び出し、財団に潜む「悪い奴ら」からキンジローを守るため、財団から連れ出してほしいと懇願します。時を同じくして、財団に潜入していたレントゲン技師の飛島は、父に言われるがままキンジローを抱えて逃げようとするあづきと運命的に出会います。

二人は行動を共にすることになりますが、ある日、あづきの携帯電話に母アキノから連絡が入ります。しかし、「ママに会わせてあげる。静岡県笛午村……」と言葉の途中で通話が途切れてしまうのです。この出来事をきっかけに、飛島とあづきの間には互いに惹かれ合う気持ちが芽生え始めます。そして、二人は途切れた言葉の糸を手繰り寄せるように、静岡県を目指す旅に出ます。

しかし、静岡県に到着した二人を待っていたのは、「アキノが亡くなった」という衝撃的な知らせでした。この報せにあづきは失意のうちに帰路につきますが、飛島は一人、笛午村に留まることを選びます。

後日、あづきは母からの留守番電話メッセージに気づきます。そこには「……どうしてあなたがここにいるの」という、短いながらも謎めいた言葉が残されていました。このメッセージは、アキノの死に対する新たな疑問を投げかけます。

果たして、アキノを殺害したのは一体誰なのか？ 動物国宝『キンジロー』は本当に本物なのか？ そして、複雑な状況の中で結ばれた飛島とあづきの恋の行方はどうなるのか？ これらの謎が絡み合い、物語は予測不能な方向へと展開していきます。

キャスト

個性豊かな登場人物を実力派俳優たちが演じています。

飛島芳一（レントゲン技師）：オダギリジョー
二宮あづき（二宮家の四女、高校生）：香椎由宇
二宮四郎（二宮家の元当主）：高田純次
二宮アキノ（二宮家の長女、元女優）：麻生祐未
香川守弘（第二農響会長）：光石研
二宮みはり（二宮家の次女、財団理事長）：KIKI
二宮日々子（二宮家の三女、財団副理事長）：キタキマユ
楠田契太郎（みはりの夫、財団理事）：斉藤陽一郎
亀田一志（財団参事）：杉山彦々
ひばり（ヒットマン）：津田寛治

特筆すべきは、主演を務めたオダギリジョーと香椎由宇が、本作での共演がきっかけで現実においても交際に発展し、後に結婚に至ったというエピソードです。

スタッフ

本作の独特な世界観を作り上げた主なスタッフは以下の通りです。

監督・脚本：冨永昌敬
製作者：松下晴彦、御領博
プロデューサー：西ヶ谷寿一、スージュン
エグゼグティブプロデューサー：甲斐真樹
協力プロデューサー：齋見泰正
撮影：月永雄太
美術：仲前智治
編集：大重裕二
音楽：菊地成孔
照明：大庭郭基
録音：山本タカアキ
制作担当：平原大志

菊地成孔による印象的な音楽は、作品の叙情的でどこか不穏な雰囲気を一層引き立てています。

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