パブリックドメインDVD

パブリックドメインDVD：安価で入手できる映画作品の世界

パブリックドメインDVD（PDDVD）は、著作権の保護期間が満了した、または何らかの理由で著作権が消滅した映画作品をDVDに収録したものです。著作権者の許諾が不要なため、低価格で販売されており、格安DVDや激安DVDと呼ばれることも少なくありません。正規盤と比較して非正規盤と呼ばれることもありますが、違法な海賊版とは明確に区別されます。

しかし、映画自体の著作権が消滅していても、劇中音楽や作品名、キャラクター名の商標権が残っている場合があります。そのため、PDDVDの商品化にあたっては、これらの権利関係を慎重に確認する必要があります。

製品の特徴

PDDVDは、製造コストの削減を重視し、以下のような特徴を持っています。

シンプルなパッケージ: DVDディスクのみのパッケージが一般的で、取扱説明書や特典などは付属しません。
簡素なメニュー画面: メニュー画面は、本編映像からのキャプチャ画像を使用するなど、簡素なものが一般的です。場合によっては、メニュー画面自体が省略されていることもあります。
映像特典の欠如: 配給会社以外の販売会社が特典資料を保有していることはほとんどないため、映像特典は付属しません。
字幕のみのローカライズ: 原語が外国語の場合、日本語字幕は追加されますが、吹き替え音声は収録されないことがほとんどです。声優の出演料などのコストがかかるためです。
* 海外製造: DVDメディアのプレスやパッケージングは、台湾や韓国などの海外企業に外注されることが多く、安価な片面1層ディスク（最大120分）が使用されます。

歴史と普及

DVDが登場する以前にも、ビデオテープやレーザーディスクなどでPD作品が販売されていましたが、価格が高価で作品ラインナップも限られていたため、普及には至りませんでした。DVD黎明期においても、価格は正規盤と大差ないため、一部の愛好家にしか普及しませんでした。

しかし、21世紀に入り、著作権保護期間が満了した作品が増加したこと、特に戦時加算が適用された作品が多数含まれたことが、PDDVDの普及を大きく後押ししました。300円から500円台の低価格製品が登場し、多くの企業が参入、数百本の作品がリリースされるようになりました。現在も、レンタルを含め広く流通しています。

マスター供給源

PDDVDのマスター供給源は様々です。公開終了後の映画プリントがコレクターに転売されたり、倉庫に放置されていたりしたものが利用される場合もあれば、ハリウッドの大手スタジオがサプライヤーにバルクでプリントを譲渡する場合もあります。ユナイテッドフイルムは、米国を代表するサプライヤーとして知られています。香港映画の場合、既発売DVDやテレビ録画をマスターとして使用することもあります。

字幕・吹き替え音声

日本語字幕や吹き替え音声は、オリジナル作品とは別の著作物であり、パブリックドメインとは限らないため、販売業者が独自に制作することが一般的です。吹き替え音声は、コストの都合上、新人声優や制作会社所属の声優が起用されることが増えました。また、著作権許可を得ずに吹き替えを搭載している違法な製品も存在します。

画質と音質

マスターフィルムやプリントの保存状態は様々であり、画質や音質にばらつきがあります。上映用プリントが使用されることが多いため、フィルムの切り替えを示すチェンジングマークが現れることもあります。また、オープニングやエンディングの一部がカットされるケースもあり、完全版とは言い切れない場合があります。正規盤と比較すると、画質を優先して片面2層ディスクを使用する正規盤に対し、PDDVDはコスト優先で片面1層ディスクが主流です。アスペクト比も正規盤と異なる場合があります。

製品化される作品

PDDVDには、名作映画から日本未公開作品、有名俳優の初期作品など、多様な作品が含まれています。マスター供給元が同じである場合、複数の制作会社から類似したラインナップの作品がリリースされることが多く、作品の内容よりも、利用可能なマスターの有無が製品化の重要な要素となります。劇場用映画以外にも、記録映画やテレビ番組などが製品化されるケースがあります。全ての格安DVDがPDDVDというわけではなく、権利者の許諾を得て低価格で販売されている作品も存在します。

アジア映画の状況

PDの原則は全ての著作物に適用されますが、日本映画のPDDVDは極めて少ないです。これは、マスター供給会社が欧米企業に偏っていること、日本映画市場規模が小さいこと、プリント管理が徹底していること、太平洋戦争前の映画の多くが焼失または行方不明になっていることなどが原因と考えられています。アジア映画、特に香港映画にはPD作品が存在しますが、発売数は少ないです。権利所有者が判明し、発売中止になったケースもあります。

流通

書店、レコード店、家電量販店、駅コンコース、高速道路のサービスエリア、大型ディスカウントストアなどが主な流通ルートです。一部出版社も流通に関わっています。

代表的なパブリックドメイン作品

PDDVDには、世界的に有名な作品から、日本未公開作品まで幅広く存在します。グローバルパブリックドメイン作品、ローカルパブリックドメイン作品などがあります。それぞれの作品には、著作権の状況や、公開年、制作国などの様々な条件が関係しています。

パブリックドメインDVDへの反響と正規盤業者の対応

PDDVDは、安価で入手できる利点がある一方、作品価値を下げる可能性や、画質・字幕の質の低さといった問題も指摘されています。正規盤業者からは、表立った対応は少ないものの、正規盤の差別化を図る動きが見られます。また、著作権保護期間に関する裁判例もあります。

その他

英語のPD映画を活用した英会話教材なども販売されています。

まとめ

PDDVDは、低価格で様々な映画作品を楽しめる一方で、画質や音質、字幕、吹き替えといった面で正規盤との違いがあり、また権利関係にも注意が必要な存在です。作品を選ぶ際には、これらの点を考慮することが重要です。

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