パブリック・エネミーズ

パブリック・エネミーズ：禁酒法時代のアウトローとFBIの攻防

2009年公開のアメリカ映画『パブリック・エネミーズ』（原題：Public Enemies）は、禁酒法時代のアメリカを舞台に、実在のギャング、ジョン・デリンジャーの波乱に満ちた生涯を描いたクライム映画です。マイケル・マン監督による緻密な演出と、ジョニー・デップとクリスチャン・ベールという豪華キャストの共演が話題を呼びました。

物語：公共の敵No.1の逃亡劇

1933年、ジョン・デリンジャーは仲間と共に大胆にも刑務所を脱獄。各地で銀行強盗を繰り返すデリンジャーは、やがて「パブリック・エネミー（公共の敵）No.1」としてFBIの標的となります。FBI長官J・エドガー・フーヴァーは、若く有能な捜査官メルヴィン・パーヴィスをデリンジャー逮捕の任務に就かせます。

デリンジャーは、強盗で得た資金で豪遊する一方、ビリー・フレシェットという女性と恋に落ちます。一方、パーヴィスはデリンジャー逮捕に執念を燃やし、ベテラン捜査官チャールズ・ウィンステッドらと共に、各地を転々とするデリンジャーを追い詰めていきます。

幾度もの逃亡劇、激しい銃撃戦、そして裏切りと策略。デリンジャーとパーヴィスの攻防は、次第にアメリカ社会全体を巻き込む一大事件へと発展していきます。デリンジャーは仲間と共にフロリダでクリスマスを祝い、アリゾナ州ツーソンのホテルに身を潜めますが、火災をきっかけに逮捕されます。しかし、その後見事に脱獄し、シカゴに舞い戻りますが、シカゴ・マフィアに追われ、サウスダコタ州で銀行強盗を犯し、負傷した仲間を置き去りにします。やがてデリンジャーはウィスコンシンの隠れ家に身を潜めますが、FBIの奇襲攻撃に遭い、仲間たちは次々と射殺されていきます。

愛するフレシェットとの再会、そして南米への逃亡計画。しかし、FBIはフレシェットの電話を盗聴しており、彼女の逮捕に成功します。窮地に陥ったデリンジャーは、裏切り者の情報提供によってシカゴの映画館で待ち伏せされ、最後は銃弾に倒れます。

史実との相違点：脚色されたドラマ

映画は、史実に基づいていますが、いくつかの脚色が見られます。例えば、インディアナ州刑務所の脱獄の日付、デリンジャーの逮捕状況、仲間の生死、FBI捜査官の行動など、史実とは異なる描写が散見されます。映画は、史実を基盤としながらも、ドラマ性を高めるために脚色を加えている点が注目されます。

キャストと制作：細部へのこだわり

映画の成功には、俳優陣の熱演も大きく貢献しています。ジョニー・デップは、デリンジャーの知られざる魅力を巧みに演じ、クリスチャン・ベールは、冷徹で緻密なFBI捜査官パーヴィスの複雑な心理を表現しています。マリオン・コティヤールは、デリンジャーの恋人フレシェット役を好演。

マイケル・マン監督は、リアリティを追求するため、当時の新聞記事、ニュース映像、関係者の証言などを徹底的に調査。撮影場所にもこだわり、歴史的建造物や街並みを巧みに活用することで、1930年代アメリカの雰囲気をリアルに再現しています。また、撮影に使用された車両、航空機、機関車なども、当時のものを使用するなど、細部へのこだわりが随所に感じられます。

作品性：歴史とエンターテインメントの融合

『パブリック・エネミーズ』は、単なるギャング映画にとどまらず、禁酒法時代のアメリカ社会の混沌、FBIの誕生、そして一人のアウトローの生涯という、歴史的背景を背景に、スリリングな展開と人間ドラマが織りなされた作品です。史実を基にしながらも、エンターテインメント性を追求した見事な映画と言えるでしょう。 歴史に興味のある方、クライム映画ファン、そしてジョニー・デップやクリスチャン・ベールといった名優の演技を堪能したい方におすすめの作品です。

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