パラノイド・アンドロイド

レディオヘッド「パラノイド・アンドロイド」解説

「パラノイド・アンドロイド」(Paranoid Android)は、イギリスのロックバンド、レディオヘッドが1997年に発表した楽曲。3rdアルバム『OK Computer』からの先行シングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで3位を記録するなど、商業的にも成功を収めました。ローリング・ストーン誌の「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では257位にランクインし、レディオヘッドの楽曲の中では最高位となっています。

楽曲の構成と音楽性

6分23秒という長尺でありながら、従来のロックの形式にとらわれない革新的な構成が特徴です。大きく分けて4つのパートから構成され、それぞれが異なる音楽的要素を持っています。

第1部: アコースティックギターのアルペジオとパーカッションが織りなす、ブラジル音楽やトリップホップの影響を感じさせるパート。
第2部: 一転して、歪んだギターが前面に出たロック色の強いパート。7/8拍子とのポリリズムも使用され、複雑なリズムが展開されます。
第3部: テンポを落とし、サンプリングされたコーラスを下敷きに、ツインボーカルが繰り広げられるパート。叙情的なメロディが印象的です。
第4部: 第2部のリフレイン。再び歪んだギターが激しいサウンドを奏でます。

このように、楽曲は目まぐるしく展開を変えながらも、全体として優れた流れを保っています。ブラジル音楽、ハードロック、グランジ、教会音楽、プログレッシブ・ロック、トリップホップなど、様々なジャンルの音楽性が融合されており、レディオヘッドの音楽的探求心が強く表れています。

歌詞の世界観

歌詞は、トム・ヨークの実体験に基づいた、暴力、狂気、資本主義への批判など、社会に対する不満や厭世観が込められています。ロサンゼルスのバーでの体験がモチーフになっていると言われています。

第1部では、「お願いだから、少し静かにしてくれないかな」という歌詞と、「僕は偏執症かもしれない、でも人造人間ではない」という無機質なコンピューターボイスが対比的に用いられています。
第2部では、「足をばたつかせて泣きわめいている、グッチ好きの子豚ちゃん」という歌詞や、「おい、あいつの首を切れよ」という過激な表現が登場します。
* 第3部では、「雨よ、降れ。雨よ、降れ」というフレーズが強迫的に繰り返され、混沌とした情景が描かれます。

これらの歌詞は、変幻自在な曲構成と相まって、独特の世界観を構築しています。

制作の背景

この楽曲は、ビートルズの「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」のように、複数の楽曲を1つにまとめるというアイデアから生まれました。各パートはメンバーそれぞれが担当し、特に第3部のスローなパートはジョニー・グリーンウッドが主導しました。制作当時、メンバーは「先生に隠れて悪いことをしているような気持ち」で、この長大な楽曲に取り組んでいたと言います。

評価と影響

発表当時、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」と比較されることもありましたが、メンバーはそれを否定しています。しかし、その革新的な構成と多様な音楽性は、多くのアーティストに影響を与え、現代ロックの金字塔として高く評価されています。WOWOWで放送されたアニメ『Ergo Proxy』のメインテーマに使用されたことも、楽曲の知名度を高める一因となりました。

MOJO誌のレビューでは、「レディオヘッドのカタログの中で欠かすことのできないもの。努力と才能と偶然に恵まれ過ぎた一曲」と評されています。

2011年には、アメリカのロックバンド、ウィーザーがこの楽曲をカバーし、YouTubeで動画を公開しています。

「パラノイド・アンドロイド」は、レディオヘッドの音楽性を象徴する楽曲であり、彼らの革新的な精神を今に伝える作品と言えるでしょう。

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