パラベラム (イングヴェイ・マルムスティーンのアルバム)

パラベラム (Parabellum)

『パラベラム』は、ネオクラシカルメタル界の巨星、イングヴェイ・マルムスティーンによって2021年にリリースされた、彼のキャリアにおける22作目となるスタジオ・アルバムです。前作『ブルー・ライトニング』からおよそ2年半の期間を経て発表された本作は、イングヴェイの最新の音楽的表現を凝縮した一枚と言えます。

このアルバムの大きな特徴の一つは、収録されている全楽曲がイングヴェイ自身のオリジナルであるという点です。全曲がオリジナルで構成されたスタジオ・アルバムとしては、2016年発表の前々作『ワールド・オン・ファイア』以来、実に5年ぶりとなります。これは、イングヴェイが再び自身の内面的な音楽性を追求し、外部のソングライターや既存の楽曲に頼ることなく、純粋な創作活動に没頭した姿勢を示しています。

また、前作『ブルー・ライトニング』と同様に、本作でも専任のリード・ヴォーカリストを迎えていません。全てのリード・ヴォーカルは、イングヴェイ自身が担当しています。これにより、彼のギタープレイとヴォーカルが一体となった、よりパーソナルな表現が実現されています。アルバムに収録された全10曲のうち、実に6曲がインストゥルメンタル楽曲で占められています。この構成は、ヴォーカル曲とインスト曲をバランス良く配置することで、彼の卓越したギター・テクニックと表現力をより際立たせる意図があると考えられます。

本作におけるイングヴェイの担当パートは非常に多岐にわたります。彼は主要楽器であるギター演奏はもちろんのこと、自身のヴォーカル（リードおよびバッキング）、そしてベース、ナイロン・アコースティック・ギター、シンセサイザー、シタール、チェロ、ティンパニといった、通常は他のプレイヤーが担当する様々な楽器も自ら演奏しています。さらに、アルバムのミックス作業にも深く関わっており、文字通りサウンド・プロデューサーとしても作品全体のサウンド・メイクを主導しました。これは、彼が持つ音楽的なビジョンを一切妥協なく実現しようとする強い意志の表れであり、本作が極めて自己完結的でパーソナルな作品であることを物語っています。

ドラムスは、ローレンス・レナーバックが担当し、イングヴェイのギタープレイを力強く支えています。また、レコーディング・エンジニアリングおよびミックスの一部をエミリオ・マルティネス・Jrが、マスタリングをピーター・ブラッシーが、そしてプリマスタリングをキース・ローズがそれぞれ担当しました。アルバムのアートワークは、デイヴィッド・ベネガスが手掛けています。

『パラベラム』は、2021年7月23日に全世界同時発売されました。このアルバムは、インタビューなどでイングヴェイ自身が「俺が作った最もピュアなアルバム」「自分の中のアートを吐き出さないといけない」と語っているように、彼のアーティストとしての現在の到達点と、純粋な音楽的探求心を示す作品として位置づけられます。彼の代名詞とも言える超絶技巧ギタープレイはもちろんのこと、多楽器奏者としての才能や、楽曲全体の構成力、そしてヴォーカリストとしての表現力を含め、イングヴェイ・マルムスティーンという唯一無二の音楽家のクリエイティビティが詰まったアルバムと言えるでしょう。

収録曲の詳細は割愛しますが、インスト曲中心の構成でありながらも、聴き手を飽きさせない多様な展開と、随所に光るイングヴェイらしいクラシカルなフレージング、そしてメロディセンスが光る楽曲群が収録されています。

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