パラマハンサ・ヨガナンダ

パラマハンサ・ヨガナンダ（Paramahansa Yogananda, 1893年 1月5日 - 1952年 3月7日）は、インドが生んだ著名なヨーガ指導者であり、霊的指導者（グル）です。本名をムクンダ・ラル・ゴーシュといった彼は、特に「クリヤー・ヨーガ」と呼ばれる技法を「神の理解と内なる平安への科学的な道」として捉え、それを西洋世界に広めることを生涯の使命としました。この目的のために、彼はヨーゴーダ・サットサンガ（Yogoda Satsanga Society of India, YSS）や自己実現同志会（Self-Realization Fellowship, SRF）といった組織を設立し、西洋におけるヨーガ普及に大きな成功を収めました。

生涯と活動

少年期にクリヤー・ヨーガ実践の復興者とされるシュリー・ユクテーシュヴァルに師事し、「ヨーガナンダ」という名を与えられました。セランポール・カレッジで学び、1915年に卒業した後、父親の期待した鉄道関連の職ではなく、師のもとで出家の道を選びます。1917年にはインドのダクシネーシュワルにヨーゴーダ・サットサンガを設立しました。組織名の「ヨーゴーダ」は「ヨーガがもたらすもの」、すなわち「自己実現」を、「サットサンガ」は「神聖な共同体」を意味するヨーガナンダの造語です。

師ユクテーシュヴァルの計画に基づき、1920年にクリヤー・ヨーガを西洋に伝えるべくアメリカへ渡航。ボストンで開催された国際会議にインド代表として出席し、各地で講演を行う中でその名を知られるようになりました。同年にロサンゼルスにYSSの西洋本部を設立し、さらに1925年にはそのロサンゼルス本部に自己実現同志会（SRF）を設立しました。1927年にはSRFの姉妹組織として全宗教自己実現教会を設立し、これら二つの団体が連携しながら、彼の指導のもとアメリカで大きく発展していきました。SRFは信者にクリヤー・ヨーガの実践を推奨しますが、信仰そのものは個人の自由であるという寛容な姿勢を理念として掲げていました。1928年には全宗教自己実現教会のリーダー職を弟子のスワーミー・プレーマナンダに託しています。

1935年に最後となるインド訪問を果たし、その際に師ユクテーシュヴァルから高い霊的境地を示す「パラマンサ」の称号を授与されました。

クリヤー・ヨーガの教え

ヨガナンダが説いたクリヤー・ヨーガは、特定呼吸法などを通じて身体に多量の酸素を取り込むことで、それが「生命の流れ」となり、脳と脊髄を活性化させるとされます。この実践により、人はカルマの束縛から解き放たれ、心身の衰えさえも止めうると考えられています。実践を深めることで心の平安が得られ、その先に神とその無限の愛を体験できると教えました。

『あるヨギの自叙伝』と晩年

1946年、彼の代表的な著作である自伝『あるヨギの自叙伝』が出版されました。この本には彼自身の生涯における様々な霊的、あるいは超常的とされる体験が綴られています。50を超える言語に翻訳され、Apple創業者のスティーブ・ジョブズ、ビートルズのジョージ・ハリスン、著名なクリケット選手ヴィラット・コーリなど、世界中の多くの人々に計り知れない影響を与えました。自己実現同志会にとってこの書物は非常に重要であり、ヨガナンダ自身の人生そのものが、彼の教えの最高の実現例であると見なされています。

晩年には、全宗教自己実現教会を任せていた弟子プレーマナンダがSRFからの独立を目指す動きを見せ、1946年に全宗教自己実現教会はSRFから分離しました。ヨガナンダは再統合を望みましたが、それは叶いませんでした。

1952年 3月7日に死去。その遺体は埋葬までの約20日間、腐敗の兆候が見られなかったと伝えられています。彼の後継者にはまずスワーミー・ラージャールシ・ジャナカーナンダが就きましたが3年後に死去し、1955年からはシュリー・ダヤー・マーターが引き継ぎました。

現代の組織と継承

現在、自己実現同志会（SRF）は世界175カ国以上に会員を有し、500ヶ所以上の寺院やセンターを展開しています。また、ヨーガナンダの教えを実践する修行者のための僧院組織「自己実現会」も監督しています。一方、ヨーゴーダ・サットサンガ（YSS）はインドおよびその周辺地域を中心に、100以上のセンターやリトリート施設、僧院を運営しています。

ヨガナンダの死後、全宗教自己実現教会は「絶対一元論自己開示教会」と改称しました。プレーマナンダ系の教会組織は、彼がクリヤー・ヨーガのグル系譜に連なる正統な後継者であると主張していますが、自己実現同志会はこれを認めていません。実際、『あるヨギの自叙伝』の初期の版に掲載されていたプレーマナンダに関する情報や写真は、後の版ではSRFによって削除されています。

ヨガナンダの弟であるヴィシュヌ・チャラン・ゴーシュもまたハタ・ヨーガの実践者として知られ、ボディビルダーでもあり、ビクラムヨガの創始者ビクラム・チョードリーの師を務めました。パラマハンサ・ヨガナンダの遺した教えと組織は、形を変えつつも現代に継承され、多くの人々の精神探求の指針となっています。

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