パラントロプス・ロブストス

パラントロプス・ロブストス：頑丈な顎を持つ古代人類

パラントロプス・ロブストスは、1938年に南アフリカで発見された化石人類の一種です。人類の進化の過程において、独特な位置を占める種として知られています。

発見と研究の歴史

レイモンド・ダートによるアウストラロピテクス・アフリカヌスの発見以来、ロバート・ブルームはダートの説を支持し、ホモ・サピエンスの祖先がアウストラロピテクス・アフリカヌスであると考えていました。医師でありながら古生物学者でもあったブルームは、南アフリカでの発掘調査に尽力しました。そして1938年、スワートクランズでアウストラロピテクス・アフリカヌスに似た頭蓋骨の破片と歯の化石を発見しました。

しかし、その頭蓋骨は以前に発見されたものよりも頑丈で、ブルームは新たにパラントロプス属を設けました。パラントロプス・ロブストスの化石は、その後クロムドライ、スワートクランズ、ドリモレンなどの限られた地域で発見されています。特にスワートクランズの洞窟では、130個体分もの骨が見つかりました。歯の形状の研究から、17歳まで生存できた個体は稀であったことが示唆されています。

パラントロプス・ロブストスは、初めて発見された頑丈型の化石人類であり、アウストラロピテクス・アフリカヌスに次ぐ2番目の化石猿人でした。ブルームの発見は、人類の進化が一本道ではなく、多くの分岐を持つ複雑な過程であったことを明らかにしました。

形態の特徴

パラントロプス・ロブストスは、パラントロプス属に共通する特徴を備えており、頭蓋骨の形状はゴリラに似ています。しかし、ゴリラよりもさらに頑丈な顎と、人間に近い咬合面を持つ歯が特徴です。ブルームは、オスには強大な側頭筋を支えるための矢状稜（頭の前後方向に伸びる隆起）が存在することも報告しています。この矢状稜は、ゴリラにも見られる特徴です。

1994年には、アンドレ・カイザーらによってドリモレン洞窟で「エウリディーチェ」と名付けられた頭蓋骨の化石が発見されました。この化石は、約230万年前のメスの個体であると推定されています。

パラントロプス・ロブストスのオスは、身長約120cm、体重約54kgであったのに対し、メスは身長1m以下、体重約40kgと、性的二型が顕著でした。歯の大きさは、パラントロプス・ボイセイと同程度でした。

食性と脳の大きさ

ブルームは、自身が発見した化石を詳細に分析し、奥歯のサイズが人間よりもゴリラに近いことを指摘しました。パラントロプス・ロブストスは、開けた平地やサバンナに進出するまで、ナッツや塊根といった硬い食物を主食としていたと考えられています。脳の平均的な大きさは410〜530ml程度であり、ゴリラの脳の大きさと大きな差はありません。

まとめ

パラントロプス・ロブストスは、頑丈な顎と歯を持つ特異な形態から、独自の進化を遂げた化石人類です。その発見は、人類の進化が単純な直線的なものではなく、多様な系統が存在したことを示唆しています。

参考文献
* ロバート・ウィンストン「人類大図鑑」p.452（ネコ・パブリッシング、DKブックシリーズ、2006年）

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