パリ協定 (気候変動)

パリ協定とは

パリ協定は、2015年12月12日にフランスのパリで開催されたCOP21（第21回気候変動枠組条約締約国会議）で採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な合意です。この協定は、1997年の京都議定書以来となる、気候変動に関する国際的な枠組みであり、気候変動枠組条約に加盟する全ての国が参加する初の試みです。法的拘束力を持つ部分もありますが、罰則規定はありません。2020年以降の地球温暖化対策を定めています。

歴史的背景

パリ協定は、2016年4月22日のアースデーに署名が開始され、同年9月3日には温室効果ガス排出量が多い中国とアメリカが同時に批准しました。その後、同年10月5日にEUが批准したことで、11月4日に発効しました。日本は協定発効後の2016年11月8日に批准しました。2019年12月時点で、ヨーロッパ連合を含め187の国と団体が批准しています。

当初、シリアとニカラグアが未参加でしたが、その後、両国も協定に署名しました。

トランプ政権による離脱とバイデン政権による復帰

当初、パリ協定は、気候変動対策における「歴史的な転換点」と評されましたが、2016年にアメリカ大統領に就任したトランプ氏は地球温暖化懐疑論者であり、2017年6月に協定からの離脱を表明しました。この離脱は、世界第2位の温室効果ガス排出国であるアメリカの脱退が、発展途上国の大量離脱を招く懸念を引き起こしました。

しかし、中国は世界最大の排出取引市場を設立し、国際的な協力体制を維持する姿勢を示しました。その後、2021年1月20日にバイデン大統領が就任すると、アメリカはパリ協定に復帰しました。

パリ協定の目標

パリ協定の主な目的は、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃未満を目指すことです。この目標を達成するため、各国は温室効果ガス排出削減のための「緩和」策と、気候変動の影響への「適応」策を講じる必要があります。

緩和と適応

緩和策は、温室効果ガスの排出量を削減し、吸収量を増やすことを目的とします。パリ協定は、今世紀後半に温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスを達成することを目標としています。

適応策は、既に起こり始めている気候変動の影響に対応するための対策です。パリ協定は、気候変動に対する回復力を高め、脆弱性を減らすことを目指しています。

各国の削減目標

パリ協定の重要な特徴の一つは、各国が自主的に削減目標（NDC：Nationally Determined Contribution）を作成・提出・維持する義務を負うことです。目標の達成自体は義務ではありませんが、各国は国内対策を実施する必要があります。

以下に、主要国の削減目標の概要を示します。

日本
2030年までに、2013年比で温室効果ガス排出量を26％削減（2005年比25.4％削減）。
森林・土地利用部門での吸収量を見込む。

中国
2030年頃にCO2排出量をピークに抑える。
2030年までに、2005年比でGDP当たりのCO2排出量を60～65％削減。
一次エネルギー消費に占める非化石[[燃料]]の割合を20％に増やす。

韓国
2030年までに、BAU比で温室効果ガス排出量を37％削減。

EU
2030年までに、1990年比で温室効果ガス排出量を国内で少なくとも40％削減。

アメリカ
2025年までに、2005年比で温室効果ガス排出量を26～28％削減。

アメリカの協定離脱と再加入

2017年、トランプ大統領はパリ協定から離脱を表明し、「アメリカ第一主義」を掲げました。しかし、国内の州政府や企業はパリ協定の目標を支持し、独自に気候変動対策に取り組みました。

その後、2021年1月にバイデン大統領が就任すると、アメリカはパリ協定に復帰し、国際的な気候変動対策へのコミットメントを再確認しました。

まとめ

パリ協定は、地球温暖化対策における国際協力の重要な枠組みです。各国の削減目標と協力体制を通じて、地球温暖化の進行を抑制し、持続可能な社会を築くための努力が続けられています。

2024年に発表された論文では、パリ協定の目標を達成するためには、各国政府による気候政策の強化が最も重要であるとされています。個人の節電などの行動も大切ですが、政策レベルでの取り組みが不可欠です。

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