パリ警視庁賞

パリ警視庁賞（Prix du Quai des Orfèvres）は、フランスの推理小説界において重要な賞の一つです。1946年にジャック・カリノーによって創設され、以来、数多くのミステリー作家を輩出してきました。

この賞の大きな特徴は、未発表の長編ミステリー小説を公募する点です。応募された作品は厳正な審査を受け、受賞作にはファイヤール社から最低保証部数5万部での出版が約束されます。この出版保証は、新人作家にとって大きな励みとなり、才能を開花させるきっかけとなっています。

パリ警視庁賞は、新人賞としての側面が強い一方で、ベテラン作家が受賞することも珍しくありません。長年にわたりミステリー界を牽引してきた作家にとっても、その作品が評価される機会となるのです。

賞の運営には、司法警察局が深く関わっています。審査委員長は司法警察長官が務め、その他の審査員も警察や司法関係者で構成されています。そのため、警察・司法活動の描写の正確さが、審査における重要なポイントの一つとなっています。リアリティのある描写は、作品に深みと説得力をもたらし、読者を引き込む力となります。

賞の名前である「Quai des Orfèvres（オルフェーヴル河岸）」は、パリ司法警察局の旧所在地に由来します。パリ司法警察局は、パリ警視庁の中でも刑事事件を専門に扱う部門であり、日本の警視庁刑事部に相当する組織です。かつて日本では、「パリ警視庁」と「パリ司法警察局」の区別があいまいなまま、「パリ司法警察局」を「パリ警視庁」と誤訳することが多かったため、この賞の邦名も「パリ警視庁賞」となりました。

過去には、「演劇賞」（Prix "théâtre"）が1961年と1962年に授与されたこともありました。ロベール・トマの「8人の女たち」や、ロジェ・ピエールとジャン＝マルク・ティボーの「Les plumes rouges」がその受賞作として知られています。

パリ警視庁賞は、フランスのミステリー小説界において、その歴史と権威において特別な地位を確立しています。新人作家の発掘と育成、そしてベテラン作家の再評価を通じて、ミステリー小説の発展に大きく貢献してきたと言えるでしょう。

公式サイトでは、過去の受賞作一覧などを見ることができます。

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