パーキンソンの法則

パーキンソンの法則は、イギリスの歴史学者・政治学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンが1958年に提唱した法則で、著書『パーキンソンの法則：進歩の追求』で発表されました。この法則は、当初は官僚制の非効率性を説明するために用いられましたが、後に様々な分野に応用されるようになりました。

法則の概要

パーキンソンの法則は、主に以下の2つの法則で構成されています。

第1法則：
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。

第2法則：
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。

これらの法則は、与えられた時間や資源を最大限に使い切ってしまう人間の傾向を示しています。例えば、仕事の量が少ないにもかかわらず、与えられた時間いっぱいまで仕事をしてしまう、または、収入が増えた分だけ支出も増えてしまうといった現象がこれに該当します。

官僚制における法則の適用

パーキンソンは、イギリスの官僚制を観察した結果、官僚の数は仕事の量とは関係なく増え続けると指摘しました。植民地が縮小していたにもかかわらず、植民地省の職員数が増加していた事例を挙げて、この法則を説明しました。

この現象は、以下の2つの要因によって引き起こされるとパーキンソンは述べています。

1. 役人はライバルではなく、部下が増えることを望む。
2. 役人は相互に仕事を作り合い、部下の必要性を高める。

つまり、官僚は自分の立場を有利にするために、部下を増やし、それに見合うだけの仕事を作り出すということです。また、パーキンソンは官僚制内部の職員数が、仕事の量の増減に関わらず、毎年5%から7%増加するとも指摘しています。

コンピュータ分野への応用

パーキンソンの法則は、コンピュータの分野にも応用できます。例えば、「データ量は与えられた記憶装置のスペースを満たすまで膨張する」という現象が挙げられます。また、コンピュータの性能向上に伴い、より多くのメモリを必要とするソフトウェアやハードウェアが登場するといった現象も、パーキンソンの法則で説明できます。

かつてコンピュータの性能はムーアの法則に従って急速に向上してきましたが、その性能向上は、演算処理だけでなく、GUIのようなインターフェースの改善や、OS自体の肥大化にも使われてきました。これは、まるで官僚が仕事を増やし、人員を増やすように、コンピュータの世界でも、与えられた資源を最大限に使い切る現象が起きていると解釈できます。

一般的な解釈

パーキンソンの法則は、より一般的に「ある資源に対する需要は、その資源が入手可能な量まで膨張する」と表現できます。例えば、大きな冷蔵庫を買っても、すぐに物でいっぱいになる、広い家に引っ越しても、すぐに物が増えて手狭になる、といった日常的な現象も、この法則で説明できます。

パーキンソンの凡俗法則

パーキンソンの法則には、「組織はどうでもいい物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く」という法則も含まれます。これは、先の2つの法則とは少し異なる内容であるため、「パーキンソンの凡俗法則」と呼ばれています。

まとめ

パーキンソンの法則は、単なる資源の浪費だけでなく、組織の非効率性や人間の行動原理にまで深く関わる法則です。この法則を理解することで、私たちはより効率的な資源の使い方や、組織の運営方法について考えるきっかけを得ることができます。また、無駄な支出や仕事の増加を防ぎ、より生産的な活動に集中するために、この法則を意識することが重要です。

この法則は、官僚制、コンピュータシステム、そして日常生活など、さまざまな場面で観察される普遍的な現象を説明する上で、非常に有効な概念であると言えるでしょう。

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