パーサ・ダスグプタ

パーサ・サラスティ・ダスグプタ卿（Sir Partha Sarathi Dasgupta, 1942年 11月17日生）は、インドと英国の著名な経済学者です。現在、英国ケンブリッジ大学経済学部において、フランク・ラムゼイ記念名誉教授として教鞭を執っています。

経歴

著名な経済学者アミヤ・クマール・ダスグプタを父に持ち、ダッカに生まれたダスグプタ卿は、主にインドのバラナシで育ちました。心理療法士であるキャロル・ダスグプタと結婚しており、義父にはノーベル経済学賞受賞者のジェイムズ・ミードがいます。

教育は、インドのバラナシにあるRajghat Besant Schoolで受け、1958年に卒業資格を取得。その後、1962年にデリー大学Hans Raj Collegeで物理学を修めました。ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに進学し、1965年に数学で卒業。同大学で経済学の博士課程に進み、1968年に「人口、成長、譲渡不可能な資本（最適な経済成長の理論に関する研究）」と題された論文で博士号を取得しました。彼の博士論文指導教官はジェームズ・マーリーズ卿でした。

キャリアの初期には、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）で教鞭を執り（1971年から1984年まで、講師、リーダー、教授を歴任）、1985年1月にはケンブリッジ大学経済学部の教授（セント・ジョンズ・カレッジの教授フェローを兼任）に就任しました。ケンブリッジ大学経済学部長を1997年から2001年にかけて務めています。1989年から1992年の間は、スタンフォード大学に籍を移し、経済学・哲学の教授、社会倫理プログラムのディレクターを務めました。1991年10月にケンブリッジに戻り、1992年にスタンフォード大学を退職して以降は、ケンブリッジ大学に専任しています。

研究分野

ダスグプタ卿の主な研究対象は多岐にわたりますが、特に福祉経済学と開発経済学、技術変化の経済学、人口・環境・資源経済学、ソーシャルキャピタル、ゲーム理論、地球温暖化の経済学、栄養失調の経済学などに貢献しています。

主な学術活動

様々な国際的な組織で指導的な役割を果たしてきました。1991年から1997年まで、ストックホルムのベイジャー国際生態経済学研究所の科学諮問委員会議長を務めたほか、1999年から2009年にかけては、南アジア開発環境経済ネットワーク（SANDEE）の創設管理諮問委員を務めました。1996年には、発展途上国の研究者の論文発表の機会を増やすことを目的としたジャーナル「Environment and Development Economics」の創刊を支援しています。他にも、マンチェスター大学、コーネル大学、ウィットゲンシュタイン・センターなどで役職を歴任。インド政府のグリーン国民経済計算に関する専門家グループの議長を務めたほか、ケンブリッジ大学の存在リスク研究センターの共同創設者でもあります。

所属アカデミー・受賞

多くの著名な学術機関のフェローや会員に選ばれています。計量経済学会、イギリス学士院、王立協会、経済理論進歩協会、ローマ教皇庁社会科学アカデミー、世界科学アカデミー、ヨーロッパ・アカデミーなどのフェローシップや会員資格を保持しています。また、スウェーデン王立科学アカデミーや米国科学アカデミーの外国人会員でもあります。

その功績に対し、数々の賞を受賞しています。2002年には経済学への貢献が認められ、エリザベス2世女王陛下よりナイトの称号を授与されました。また、ボルボ環境賞（2002年）、アメリカ農業経済学会PEN/ジョン・ケネス・ガルブレイス賞（2007年）、ザイード国際環境賞（2011年）、欧州環境資源経済学者協会から欧州生涯功労賞（2014年）、ブループラネット賞（2015年）、タイラー賞（2016年）など、環境・資源経済学や開発経済学における重要な賞を多数受賞しています。2024年にはBBVA財団知識フロンティア賞やクラリベイト引用栄誉賞も受賞しています。

主な著作

共著を含む多くの重要な著作を発表しています。代表的なものに、『Economic Theory and Exhaustible Resources』（G.M. Healとの共著、1979年）、『The Control of Resources』（1982年）、『An Inquiry into Well-Being and Destitution』（1993年）、『Human Well-Being and the Natural Environment』（2001年、改訂版2004年）、一般向けの『Economics: A Very Short Introduction』（2007年）などがあります。

これらの活動を通じて、ダスグプタ卿は経済学の発展、特に環境問題や開発課題への経済学的なアプローチの確立に大きく貢献しています。

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